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ーー怪談サークル「とうもろこしの会」会長・吉田悠軌が、この夏、絶対に語らねばならない選りすぐりの怖い話をお届けします。

 どうも、オカルト・怪談を研究している、吉田悠軌と申します。

 実際に怖い体験・不思議な体験をしてきた人々から、僕が聞いてきた奇妙なお話の数々。その一部を、この場を借りて皆さんにお届けしようと思います。

 なお、文中に出てくる名前は、すべて仮名となっております。では、少しでも暑さを忘れることができましたら幸いです……。

■ちょっとイイ怪談……「お祖父さんの鳥居」

 タカミさんには、子どもの頃の不思議な思い出があります。

「小学生の時のちょっとの間、家に大きな鳥居があったんです」

 それも家の入り口、門のすぐ横に、まるで人を出迎えるかのように“でん”と構えていたのだそうです。その辺りの神社にも負けない立派なつくりで、とても普通の家には似合いません。

 それは、タカミさんのお祖父さんが作らせたものでした。

 後から聞いた話では、「個人の家に鳥居を建てるな」など、周囲からはさんざん反対されたようです。

「鳥居なんて作ったら、必ず家相が悪くなる」「お稲荷さんだって、個人の家に置くなら必ず裏手にしか作ってはいけない」「ましてや、こんな立派な鳥居を正面に置くなんて……せめて裏口に建てたらどうか」

 そんな意見にも耳を貸さず、どうやったのかお祖父さんは鳥居を玄関の前に作ってしまいました。

 近所からも変な目で見られるし、家族の誰もがこんなものは取り壊したいと嫌がっていました。でも、お祖父さんだけは、頑として鳥居を置くことにこだわっていたのです。

 鳥居ができてから、何カ月かが経った、ある夏の日。

 朝から急な用事ができたようで、家族はどこかに出かけてしまい、幼いタカミさんとお祖父さんだけが留守番をしていました。

 とても暑い日で、窓も玄関もすべて開け放していたのを覚えているそうです。

 タカミさんが居間で遊んでいると、タカミさんの横をお祖父さんが通り過ぎました。

 なにげなく廊下をのぞいてみると、お祖父さんが玄関口の廊下に座っています。

 その奥には男の人が1人、いつから来ていたのか、玄関の上がり口に腰をかけていました。

 こちらに身体を半分ひねりながら、男の人はお祖父さんと何やら話しています。すると、こちらに気づいたお祖父さんは一言、

 「ヒデフミだよ」
 
 ……と、タカミさんに言いました。

 どうやら男の人のことを指しているようですが、“ヒデフミ”なんて名前を言われても、何のことかわかりません。

 男の人は、しばらく無言でタカミさんをじっと見ていました。

 そしてお祖父さんに一言二言話したかと思うと、スッと立ち上がり、玄関の鳥居をくぐって帰っていきました。

 お祖父さんは、男の人については何も言いませんでした。

 家族が帰ってきたのは、夜になってからでした。
 
 これも大きくなってから両親に教えられたのですが、皆は警察に呼ばれていたのだそうです。

「父のお兄さんを見つけた、という報せだったそうです」

 タカミさんにとっては、そんな叔父さんがいたことすら知らされていませんでした。

 どうも。地方で何かの商売をすると家を出て行ったきり、もうずっと行方不明のままだったのだそうです。

 そしてあの夏の日、タカミさんの家族は、十年ぶりに彼の行方を知らされたのでした。

 日本海側のある県で、叔父さんの死体が発見されたからです。

 路上で、野垂れ死にのようにして亡くなっていた、とのことでした。

 そんな話を母親から聞かされたタカミさんは、その叔父さん、つまりお祖父さんにとっての長男の名前を尋ねてみました。すると母親は、声をひそめるように教えてくれたそうです。

「ヒデフミさん、っていうのよ」

 その年の夏が終わると、お祖父さんは、あれだけこだわっていた玄関の鳥居を取り払ってしまいました。

 それから間もなく、部屋で寝付くようになってしまい、そのまま亡くなってしまったのだそうです。

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■吉田悠軌(よしだ ゆうき)
怪談サークル「とうもろこしの会」会長。怪談やオカルトを「隠された文化」として収集・研究している。著書に『放課後怪談部』。編集長を務める同人誌『怪処』ではオカルト的な場所を広く紹介。
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