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たった一人の社会派くん』です

 あまりの過激発言から、賛否両論を巻き起こした、唐沢俊一・村崎百郎両氏の鬼畜対談『社会派くんがゆく!』。歯に衣着せぬ言動で優等生メディアからは目の仇にされる一方で、人間の本質を突き、魂の暗部に切り込んだ語りは多くの読者の支持を獲得し、同シリーズの単行本はアスペクト社から10冊刊行された。しかし、2010年7月23日。村崎百郎氏が自宅にいたところを“読者を名乗る”男によって刺殺されるという事件が起こる。あれから3年。『たった一人の社会派くん』を新たに始めると宣言した唐沢俊一氏に、その思いを伺った。

――今回、メルマガ『たった一人の社会派くん』を始めようと思ったきっかけを教えてください。

唐沢俊一氏(以下唐沢) そもそも最初に村崎百郎と連載『社会派くんがゆく!』を始めた時は、「そのときどきの猟奇事件を語ろう」という趣旨だったんですね。ところが、やっているうちに猟奇事件の犯人が小さく見えてきてしまったんですよ。それぐらい政治や国民の劣化がひどかった。

 猟奇事件というのは異常な事象なのではなく、国自体が劣化していることによって生じた、自然な現象なんじゃないのか、というのが、たぶんあのまま『社会派くん』を続けていった末に迎える最終回の結論なんじゃないのかと思うんです。

 民主党への政権交代は完全に洗脳なんだけど、それに騙された末に、その後はまた自民党政権を独裁が可能なくらい絶対視して選んでしまう。これも「目が覚めた」なんて話じゃない、“劣化”、別の言葉で言えば“質の低い洗脳”ですよ。じゃあ、私たちが洗脳されていない状態というのはどういう状態なのか。文化人類学とか行動心理学とか動物学とかの本を一時読みあさった時期があって、それが前の連載の後期あたりでやや、つかめかけてきた感じがあった。その最中での村崎百郎の死があって、中断されたものを再開したかったという気持ちがありました。

■洗脳されたい欲

唐沢 そもそも洗脳一つとっても、その言葉に拒否反応持つ人は多いだろうけど、私たち人間というのは洗脳された方が安心できる動物なんです。洗脳されたがっているんです。洗脳されると快感なんですよ。

 UFOを例にとると、『未知との遭遇』って映画があったけど、UFOとは遭遇、つまり偶然に出会ってしまうものだという風にみんな思っているかもしれませんね。でもあれは違うんです。
本人たちが「UFOを見たい」と、意識の下で思っているから見る。本人は偶然だと思っているかもしれないけど、本人が見たいと思って空を見て、「やはりUFOはいたんだ」と、「自己洗脳」して喜んでいるわけですよ。

 一般的には超常現象に遭遇すると不安になると思われているけれども、そうじゃなくて、人間というのは理性を否定されるような事件に触れると、満足する部分があると思うんです。この世界に、まだ「遊びしろ」があるんだということを確認できるからなんですね。

 猟奇事件も同じで、起きるとみんな「やっぱりそういう事件が起きたか!」といって喜んでいたりするんですね。自分がなんとなく感じていた社会への不信感が、グロテスクな事件が起こることで再確認できるんです。

 猟奇事件の犯人って事件を起こす前はわりとまじめだったということが多いんですが、じゃあ、まじめで人に迷惑をかけなくて、おとなしくて……という性向は果たして正常なのか、とそろそろ疑う時代になっていい。平穏な時代であったら美徳だったかもしれないけれど、こういう閉塞感のある時代に、まじめというのはストレスためまくりの性格じゃないですか。

 ……で、そのストレスの飽和点というのがどのポイントか、本人にも周囲にもまるでわからない。こういう人間は自分でブチ切れると猟奇犯罪を犯し、カリスマに出会うとカルト宗教の信者になり、国にアイデンティティを求めると国粋主義者のヘイトスピーカー、理想主義にハマるとアナキストになります(笑)。
「猟奇犯罪に走るのはまじめでなくては……」という強迫観念からの脱洗脳ですが、脱洗脳っていうのも洗脳の一種ですからね。

「戦争に行け」と言われて従うのはある意味で楽なんですよ。自分で考えたり、自分で責任を取ったりしなくていいんだから。それは国がやってくれるから(実際はBC級戦犯などで、その論理は否定されちゃうんですが)。……だから、戦争体験者って自分の戦時体験をうれしそうに語るのね。戦争中は何も考えず、命令に従っていればよかった。自分の立ち位置というのを自分で決めなくても国が決めてくれた。

……で、こう考えるとある意味でそれと似ているのがSMで(笑)

――南條範夫に『被虐の系譜』という小説があって、そこでもこのテーマが語られています-

唐沢 一方的に痛めつけられて、理不尽なことを押しつけられたりするMの立場も、やはり自分で考えたり、自分で責任を取ったりしなくていいから、快感だったりするんですよ。人間というのは意外にそういう「自分で決めなくていい。すべてをゆだねちゃえばいい」環境が楽だったりするんですね。日本人には特にそういう傾向が強い。M民族なんです(笑)。

 ところが、西欧の自立主義が入ってきて、これが日本の中でゆがめられて戦後、受容された。西欧の自立主義は社会の中で自分の立ち位置を見定めるということなんだけど、日本の場合、社会の一員であることより自分個人であることを大事にするのが自立だ、と誤解してしまった。

 キラキラネームなんていうのもその現れだし、UFOを見るということが社会の中で敗者となった自分の復活につながる、というのは三島由紀夫の『美しい星』のテーマですよね。こういう社会の中で自分が世界でひとつの花、と思い込むといろいろヤバいことになる(笑)。

――ヤバい世界に触れる機会もあったと思いますが、「ここから先はアブない」という境界線を引いたりしていますか?

唐沢 僕がデビューした頃っていうのは鬼畜ブームや殺人ブームで、死体写真の本が売れたりしたんですね。当時そういう世界のリーダーだった青山正明という人がいたんですが、彼はドラッグにはまり、逮捕され、最後は首つり自殺してしまいました。

 右翼・左翼・犯罪組織と平気で付き合っていた知り合いのライターで行方不明になってしまった男もいる。東京湾に沈んでいるんじゃないか、ってみんな酒の席で言うけど、あながち否定できない。

 僕自身は、最初から表の世界しか知らない人に、裏の世界もあるんだよと教える案内役だと自分の役割を心得ていたので、完全に裏の世界の住人にならないようにしていました。考えるとその境界線のところで30年間やってきた気がしますね。

 村崎百郎という人も本来はまじめな、常識的な人だったんだけれど、そのブームの中で、鬼畜の世界にどっぷり足を踏み入れてしまっていた。連載の末期には表の世界に戻りたいという姿勢も見せていたんですけどね。結局、どっぷりはまっていた「狂気の世界」の住人に、不条理な逆恨みをされて、殺されてしまった。

 鬼畜ブームの頃の村崎百郎は「世の中からドロップアウトしろ」「常識をののしれ」「異常という世界にどっぷりと身をひたせ」という主張をしていて、ある種カリスマ性がある書き手だったんですね。ところが鬼畜ブームが去り、村崎百郎自身も『社会派くん』の中でまともな発言をし始めているのを読んで、彼の熱心な愛読者が「裏切られた」と思ったのかもしれない、と最初思ってしまった。証言の中ではこの連載の話は出ませんでしたが……。

 村崎百郎が殺されて3年経ち、あの連載もどんどん過去のものになって、ちょっとさびしいなと思っていたんです。誰か新しい人と組もうとも思ったんだけど、なかなか村崎百郎に代わる人というのが見つからない。じゃあ1人でやろうということになって、今回のメルマガを始めたわけなんです。

――『社会派くん』と、今のネットでの中傷とか、在特会によるヘイトスピーチの違いは何なんでしょうか?

唐沢 村崎百郎の罵倒というのは、罵倒することによって、その対象に光を当てて、何かが見えてくるんですね。被害者をただ哀れな存在として奉るのでなく、殺された方だってひでえじゃねえか、と言うことで、まったく新しい視点が見えてくる。「消えてなくなれ」というヘイトスピーチとはそこが違う。

 たとえば橋下徹大阪市長の従軍慰安婦発言も(発言自体はどうしようもないと思いますが)、それを語ることで、それまでないこととされていた問題に光が当たるという面があるんですね。ところがたたかれて票も落ちてしまうので、何も言えなくなって謝罪をしてしまう。

 ヘイトスピーチみたいなものが許される一方で、言論界にはタブーというものがどんどん増殖している気がします。冷静に従軍慰安婦問題を論じようとしても、何か言うだけで攻撃されて、その人の人格自体が否定されてしまったりする。

 だから、『社会派くん』というタイトルをつけるというのは、「鬼畜というフィルターを通した語りですよ」と宣言することで、何でも言える部分があるんですね。別にフィルターがあってもなくても唐沢俊一の発言であることに変わりはないんだけど、そういう前提をつけないと種々の問題が起きるという変な社会なんですね。

 というわけで、『たった一人の社会派くん』では毒を吐きまくりながら、東西南北森羅万象のニュースを、バッサバッサと切って捨てていこうと思います。

――楽しみにしています!
(取材・文 コレコレ)

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■唐沢俊一(からさわ・しゅんいち)
作家・評論家。1958年札幌生まれ。90年代サブカルブームの代表的書き手の一人として活躍し、その後社会評論、『トリビアの泉』『世界一受けたい授業』などでの雑学ブームの仕掛人として多数のメディアに顔を出す。最近は劇作家としても活動。



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