【前編・動画はコチラ

 神奈川県伊勢原市で起きた路上切り付け事件の容疑者、貞苅詩門容疑者が、ファンタジー系で一定規模のクラスタ(関心層)を形成している人工言語「アルカ」の作者セレン・アルバザード氏その人であり、さらにYou Tubeに投稿された本人動画が「中二病的」であるとして話題をよんでいる。

動画は、You Tubeより

 前編では、動画から見て取れる、貞苅容疑者の人物像、そして代替現実としてのリアリティを考察した。後編、言語学者として、その偉業に相応しい賞賛を得て余生を過ごすことも充分可能なほどの才能の持ち主だった貞苅容疑者が、なぜ稚拙な傷害事件を起こし、栄光への道を自ら閉ざしてしまったのか……。この点を実践魔術師としての視点から解釈してみよう。

■魔術師の技法からみる、貞苅容疑者の自我を狂わせた変性意識への突入

 西洋魔術の技法に「インヴォケーション(召喚)」というものがある。これは一言に言えば「神降ろし」の技術であり、基本的には恐山のイタコや町場の霊能者が行っている「口寄せ」と同じものである。

 しかし西洋魔術の文脈では、この技術はある種の心理学的なモデルによって説明することができ、生来的な霊能者でなくとも誰でもが習得することができる、極めてクールな心身技法として扱われている。

 この技法の基盤にあるのは、「わたし」とは言語の網であり、言語操作によっ て「わたし」を変容せしめることができる、という心理学的モデルだ。一連の祈祷文の朗唱によって変性意識へと導いていく、典型的なインヴォケーションの一例を挙げてみよう。

「彼は翼あるサンダルもて天駈ける伝令、それはヘルメス/彼の杖は叡智と光輝、幻想と癒しの礎なりて/かたちをもたず、またあらゆるかたちを生み出すもの、それはヘルメス

 おお汝ヘルメスよ、汝が変容の霊薬は我が魂の杯に注がれたり/我汝に嘆願す、一切のかたちを持たぬ至高の光よ、語られざるものよ/我が舌をもて汝が叡智を語らせしめよ、我は汝に、我は汝に嘆願す!

 我が声を聴け、大地の子らよ、我が秘密の舌もて語り得ぬものを語らせしめよ/我はヘルメス、三重に高められたる深淵の伝令なり、我は汝らに命ずる/我が声を聴け、我が秘密の舌もて語り得ぬものを語らせしめよ」
(ヘルメスの召喚祈祷文, Eastern Fraternity of Hermaphrodytos)

 こういった召喚文を情熱的に唱えることで、一種の演劇的トランス状態へと没入していく訳だが、この召喚文は明晰な心理学的テクニックによって裏打ちされている。

 それは、「彼→汝→我」へと展開していく「人称の変化」だ。

 自身の身体に神を降ろし、神そのものへと変容する術者は、「彼」の属性を確認し、「汝」に直接 に嘆願し、「我」として顕現する。実際に声を出して、演劇的な迫力を持ってこの召喚文を唱えれば、誰でもが自意識の微妙な変化を体験することができるだろう。このようなテクニックは西洋魔術というよりむしろ、西洋魔術がその源に内包するギリシャ悲劇以来の演劇の伝統に根ざすものであり、訓練を積んだ舞台俳 優なら容易にその感覚を理解することができるだろう。



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