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 梅雨の季節になると、咲き誇る紫陽花を愛でに、湘南・鎌倉へ出掛けたくなる人も多いでしょう。

 鎌倉といえば、今から20年前に鎌倉へ紫陽花を見に行った人が、こんな体験を教えてくれました。

■紫陽花の前に立つ女(知人の話)

 あれは、ちょうどこんな梅雨の時期。

 その日も雨が降り、真昼だというのに空は白い雲に覆われ薄暗く、遠くに見える山々も白く霞んで見えた。

 私が某寺を訪ねたのは、そこが紫陽花の名所と聞いていたから。平日というのも手伝ってか、訪れている人はまばらで、ゆっくりと時間を掛けて花を眺めながら歩いているだけで、どこか贅沢な気分に心が弾んでいたのだが、ふと、花の向こうにある、ひと際鮮やかな赤いものに気がつく。

 紫陽花の傍らに立つ、赤い傘を差す白い着物姿の女が立っていた。顔は傘に隠れて見えない。まるで時が止まったかの如く、微動だにしないその姿は、宛ら人形のようにも見えた。

 どれくらいの時間が経ったのか、見知らぬ人をじっと見続けるのも失礼かと思い、一度は目を反らしたものの、再び気になり視線を戻してみると、すでに女の姿が無かった。

 気分を悪くして蹲り、背丈ほどもある紫陽花に隠れてしまったのか……と花の向こう側がよく見えるよう移動して見てみたのだが、そこには誰も居なかった。

 まるで白い靄に溶けてしまったのではないか、と思った途端はじめて背筋がゾッとした。そのまま紫陽花を見ているのも無性に怖くなり、足早に寺を後にした。

 後日、この話を友人に話すと、「昼間で良かったね。日が暮れていたら、君も一緒に連れていかれたかもよ?」と真顔で言われ、改めて、その女の異様さに改めて寒気を感じた……。

 私もこの話を聞いた後に知ったことですが、梅雨の時期になると、あちこちの紫陽花の前に、“どこからともなく現れ、忽然と姿を消す”というのは、当時鎌倉では有名な話だったらしいのです。

 ではなぜ、こんな怪談話が囁かれるようになったのでしょうか。



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