この2冊の本に共通するのは、ウソか本当かは脇に置いて、普通に読んでいて面白いという点。思いもよらない内容の連続を、素直に楽しめばよいのです。同じことは霊能者としての宜保さん自身にも言えるのではないでしょうか。

 当時、彼女の霊能力の真偽については激論が戦わされました。霊視による的中も、コールド・リーディングや事前調査で可能ではないかという反論もよく言われます。しかし「ヤラセか否か」とは一歩引いた目で見ても、その話が単純に面白く、共感を読んだからこそ、宜保愛子という存在はエポック・メイキングだったのでしょう。

 宜保さんは「タレント霊能者」の元祖だともいえます。それまでの心霊系と彼女が一線を画したのは、「霊はただの怖い存在ではない」とした考え方です。

 心霊スポットの幽霊に向かって「可哀想に……苦しかったでしょう?」と涙を流す姿はお馴染みのものでした。たとえ祟りなす存在でもただの悪霊と切り捨てず、霊を人間的に捉える視点を持っていたのですね。また、先祖を敬い、お墓参りをキチンとするように訴えていたのも、人気を博した理由の1つでしょう。特定の宗教を持たないとされる日本人ですが、ご先祖さまへの信仰心は、ほぼすべての人が共感するモラルだからです。これらの特徴は、江原啓之やスピリチュアル女子大生CHIEなど、後に続くタレント霊能者たちにも影響を及ぼしていると思われます。

 宜保さんが霊について語る時はほかにも、家族関係の大切さ、女性の自立など、おそらくその人生から裏打ちされた主張が根底に流れています。大槻義彦教授をはじめとする否定派の人たちも、最終的には「その人間性は素晴らしい」と口を揃えていました。長年に渡って見えざるものを見てきた人ならではの面白さと倫理観、それが宜保愛子という存在を際立たせていた要因です。一時の規制が緩み、またオカルト的なものが表に出だした今だからこそ、彼女に再注目してみてもいいかもしれません。

■吉田悠軌(よしだ ゆうき)
怪談サークル「とうもろこしの会」会長。怪談やオカルトを「隠された文化」として収集・研究している。著書に『放課後怪談部』。編集長を務める同人誌『怪処』ではオカルト的な場所を広く紹介。
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