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剃髪にも意味がちゃんとあるんです

――家の宗派と違うお寺にお参りしても大丈夫? お坊さんは、どうして頭を剃っているの? 意外と知らない仏教のあれこれや、ちょっと気になる疑問や不思議なしきたりは、直接お寺に聞いちゃいましょう!

<今回のギモン>
お坊さんはどうして頭を剃っているの?

<聞いたところ>
真言宗豊山派 北田山寶泉寺(埼玉県所沢市) 色摩真了さん

 かつては髪型で身分、職業がわかる時代がありましたが、現代ではおすもうさんと、お坊さんけが判別可能です。「お坊さん=剃髪」の構図が当たり前すぎて、なぜ剃髪しているのか、その理由がサッパリわかりません。そこで、お坊さんに直接聞いてみました。

――お坊さんは、どうして頭を剃っているんですか。

お坊さん 以前、僧侶として、ある高校の社会科の授業に参加したときも、この質問は「お坊さんに聞いてみたいこと」のナンバー1でした。そのときは「格好いいから」とも答えましたが(笑)、一番明快な理由は、「余計なこだわりを持たない」ということなんです。髪の毛があると、そこにとても多くの意識や時間を割かなければなりません。

――確かに、髪を整えるにはすごく時間がかかります。

お坊さん 私も高校生ぐらいのときは髪を伸ばしていたのですが、癖毛なのでセットするのに時間がかかりました。湿気が多かったり梅雨の時期は髪型が決まらなくて、なんとなく1日イライラしたり、気分が乗らなかったりします。ですから、そういうことに気を取られることがないように剃るんです。高校野球の選手も、野球に専念するために坊主頭にしている。彼らはその分、眉毛にいってしまっているので本末転倒なんですが、それも子どもらしくてほほえましいですけどね(笑)。程度の差はあれ、街を歩いていると誰でもウィンドーに映る自分が気になったりします。しかし、髪を剃っているとそこにかけるエネルギーが少なくてすむので、ほかに回すことができます。

 聞いてみれば「やっぱり」と思う納得の回答です。確かに、美容院に行ったばかりのときは気持ちが弾みますし、髪の乱れをうまくセットできないと「外に出たくない……」と感じます。

 お坊さん 仏教の目標は「苦」からの解放です。その「苦」のおおもとになるのが「こだわり」です。だから、「こだわりをいかに捨てられるか」というところに発想がいくのです。何もなければこだわりが生まれません。家族もいないほうが家族に対するこだわりが生まれなくなるので、お釈迦さまたちは家族を捨てて出家したわけです。着ている服にしても、「赤がいい」「シルクにしよう」などといろいろ出てくるので、お釈迦さまの時代は最低限にということになりました。坊主頭もそうですね。

――なるほど。では、「剃るように」と言われたり、強制されたりすることはないんですか?髪のあるお坊さんもいますよね。

お坊さん 私の宗派では、あまり強制はされないですね。真言宗の僧侶はつるつるの人が多い気はしますが、角刈りぐらいの人も結構いますし、普通に髪が長い人も数十人に1人ぐらいの割合でいますね。

――筆者の親戚一同は浄土真宗。親戚の葬儀や法要は、髪のあるお坊さんが来ていた記憶があります。学校の先生と兼務していたからだと思っていたのですが、これにも理由があるのですか。

お坊さん 浄土真宗を開いた親鸞(しんらん)さんというお坊さんは、時の権力者からわけあって島流しを命じられます。その際に、権力への批判を込めて「私は、国が決めた(国おかかえの)僧でもなければ、俗人でもありません」と宣言します。これを「非僧非俗」というのですが、僧侶でも俗人でもない、このあたりに浄土真宗のお坊さんが髪を剃らない理由があるようです。ただ、浄土真宗の中でも、最近の若いお坊さんには頭を丸めている人が増えてきていますね。いずれにしても法事の後席などで、ご住職に「お坊さんは髪を剃っている人が多いですが、どうして剃ったり剃らなかったりするのですか?」と尋ねてみてはいかがでしょう。きっと「待ってました!」とばかりに答えてくださるのではと思います。

――あえて頭を剃らない宗派もあるんですね。

お坊さん 真言宗では数年に1度大事な儀式があって、そのときは髪をつるつるに剃ります。修行に入るときもそうですね。儀式のとき、完全に頭を剃るのは「もっともこだわりを捨てた状態での身だしなみとして形から入る」ともいえます。バリカンで丸刈りにしてからカミソリを入れますが、真言宗ではこのように頭を完全に丸める機会が結構あるので、普段から剃っている僧侶が多いのかもしれませんね。

 「頭を剃るとすごくラクなので、伸ばさなくなります」とお坊さん。「頭を剃れ」と言われるのではなくて、こだわりを捨てるという仏教の教えを自ら体現していたのですね。仏教の教えを見えるところから表現していることの1つが剃髪かどうか、なのかもしれません。なかなか深い世界です。
(恐ミオ)

【答えてくれた人】
■色摩真了(しかま・しんりょう)

真言宗豊山派 北田山寶泉寺(埼玉県所沢市)の住職を平成24年から務めるイケメン僧侶。仏教の教えをわかりやすく説くと定評がある。年4回、寺報「るり光」を発行。
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