satoushi1.jpg
佐藤健寿氏と『奇界遺産』

 世界中の“奇妙なモノ”をまとめた写真集『奇界遺産』(エクスナレッジ)。同書の作者でもあり、超常現象を調査するサイト「X51.ORG」の主宰者であるフォトグラファーの佐藤健寿氏にお話を伺った。

――――佐藤さんが、不思議な現象に興味をお持ちになったきっかけは何ですか?

佐藤 サンフランシスコに住んでいたときに、「エリア51」っていう、アメリカ空軍の管理地区であり、UFOや宇宙人、そして陰謀論の舞台としても代表的なスポットが意外に家から近かった。それで、行ってみたら非常に面白かったんですね。もともと美大で写真をやっていたので、写真の被写体としても面白いかなと思ったのがきっかけです。

area51.jpg
アメリカ・ネバダ州「エリア51」(c)Kenji Sato

―――『奇界遺産』で印象に残ったエピソードなどありますか?

佐藤 この本にも載っていますが、ミクロネシアの古代遺跡がある島で、実際に撮影した写真が消えたこと。データが消えてしまったので、帰国してから復旧してもらって、なんとか残ったものを掲載したんです。島自体が呪いを帯びているらしいんですが、王の墓と呼ばれる島にボートで入るところから、写真がおかしくなってしまいました。この島は“よそ者に島のことを話してはいけない”と、20世紀前半まで言い伝えられていた、いわくつきの場所です。昔は余所者で島に行った人は、実際に死んだり行方不明になっていて、日本で初めて訪れた朝日新聞社の人も、同じように写真が消えたそうです。次に訪れた日本の研究家の人も写真が消えたり、同行した家族が謎の病気になったり、印刷でトラブったそうです。僕も、印刷する時に僕のページだけ印刷ズレが起きたり、フォントが勝手に変わって困ったという話が、それぞれ違う雑誌で3回くらいありました。

※編集部注:掲載すると呪われるそうなので、名称など詳細は写真集でご確認ください。

―――この写真集で一番印象深い場所はどこでしょう?

佐藤 どこが一番というのは難しいんですが、やはりインパクトが強かったのは、貴州省中洞にある世界で唯一、洞窟の中にある村です。岩肌にぽっかりと開けた洞窟に“苗族”という民族が住んでいます。今、中国は経済的にバブルを迎えているとか、GDPで日本を抜いたといったニュースが多く、中国全土が上海のように近代的な発展をしたイメージがありますけど、実際はまだこういう生活をしている人がいる……。そういう現場の振れ幅みたいなものを自分の目で見ると、思い込みというか、常識が揺らぐ。日本の中で常識だと思っていることが覆される。そこが面白いですね。

cave1.jpg
中国貴州省・洞窟村「中洞組」(c)Kenji Sato

―――写真集を発売するきっかけにもなったサイト「X51.ORG」では、かなりグロテスクな写真も扱っていますが、そういったものについてはどう思いますか?

佐藤 よく誤解されるんですが、“グロテスク”という言葉はすごく大雑把な言葉で、ただ“気持ち悪い”写真や医学の症例に興味はないんです。僕が見たいのは、異常とか普通の概念が揺らぐ何かです。だから、ビジュアル的に面白いかは二の次なんですよ。あくまで人間の可能性として、結合双生児にしても、洞窟の村にしても、“これでも人間は生きていけるんだ”とか、“ここまでやってしまうんだ”という可能性の極北みたいなものを見たいんです。人間の定義が揺らぐといいますか、“普通”が揺らぐ。その感覚を大切にしてるんです。学者の中でも、突然変異はむしろ最先端であって、人間の進化途上の姿として現れるという人もいます。日本では、そういうものを見せる場合、家族が支えているといった、ヒューマンドラマ風に無理矢理仕立てられたり、“こういうものを出したら不謹慎だ”といった曖昧な自主規制がありますが、海外では、ディスカバリーチャンネルみたいな番組があって許容値が広いですね。

―――あまり心霊は扱っていないようですが、心霊現象などについてはどう思われますか?

佐藤 UFO以上に、結局は解釈と信念の問題になるので、そもそも心霊現象を取材して客観的に伝えるということ自体がとても難しい。ただ面白いことは、心霊を調べていくと写真学に通じるんです。歴史的にメディアにも深いつながりがあって、心霊がすごく意識された時期っていうのは、写真の技術が発達した時期とすごく重なっているんです。第一次世界大戦後に死んだ家族と話したい人々が、霊を降ろすために降霊会を開いた。写真技術も同じで、心霊写真技術師というのが昔はいて、死者に会いたい人々が、生きている人と死者の画像を合成したりした。昔の銀板写真には、死んだ赤子の写真などがありますが、あれは思い出を残すために高いお金を払って遺影を撮っていたからで、つまり始まりからして死者であったり、今はこの世にいない者を写すための技術だったともいえる。メディア(media)っていう言葉も、元はメディウム(medium)からきていて、メディウムは霊媒とか媒介を意味するものであることも、偶然ではありません。言い方を変えると、写真技術が生まれたから心霊写真ができて、心霊のイメージがそこで逆に作られた。そしてラジオが発明されると、ラジオの中で霊の声が聞こえたり、テレビやビデオができれば映像の中に霊が見えるとか。新たな媒介が生まれることで、新たな心霊現象が生まれる。マクルーハンではないですが、テクノロジーやメディア(媒介)そのものがメッセージ(幽霊)を作る。だからテクノロジーと幽霊というのは、すごく興味深いテーマだとは思ってます。

―――科学の発達は、オカルトをはやらすっていうことでしょうか?

satoushi2.jpg

佐藤 そうともいえますが、逆にいえば、どんなに科学が発達しようとも、人々がそれを見たり欲求したりする根源的な部分は、テクノロジーに影響されないことが面白い、と個人的には思います。でも単純に“見た目”という意味では、昔のアナログ写真の情報とかのほうが面白いですね。最近は、機械の性能がよくなりすぎて、UFOもはっきり写りすぎて面白くない。前に祖父江慎さんにUFOの本を作る相談をしたんですけど、そのときも「今ってすごい高解像度過ぎて夢がない」って話で盛り上がりました。トランスフォーマーのCGみたいで、合成できそうに見える。動画も、昔の比じゃないほどYou Tubeに上がっているけど、僕が好きなのは、昔のどうしようもない風景写真に、本当に小さくて点みたいなUFOが映り込んでいるシュールな画像。そっちのほうがワクワクしますね。

―――最後にハピズム読者に一言。

佐藤 よく、“いろいろ見た上で、死生観とか自分の信念がどう変わったか”みたいなことを聞かれるんですが、逆に、世界中のいろんなものを見ればみるほど、凸凹が踏みならされて、感覚としてはフラットになっていく。それがいいか悪いかはわかりませんが、単純に極端なことを信じなくなるというか、いろんな物ごとが相対化されていく。今は本屋に行けばスピリチュアリズムとか精神世界本が横行していて、「こうすれば人生がよくなる」とか「あなたはこうすれば救われる」みたいな極端なメッセージが相変わらず掲載されてますが、そんな便利なものが本屋にあるわけない。だから本一冊とか、テレビでしゃべってる“すごいらしい誰か”の言葉を安易に信じないで、固定観念を持たずに、いろんなものをたくさん見に行ってほしいですね。そうすることで、自分にとって本当に必要な情報とそうでないものもわかるようになると思います。自分が何も知らないということを知るのが、今ほど難しい時代はないと思うので、いろいろと実際に見に行って、自分が何も知らないことをまず知れば、簡単な言葉にだまされない、ブレない芯を持った女性になれるんじゃないでしょうか。
(取材・文=樫原叔子)

■佐藤健寿(さとう・けんじ)
武蔵野美術大学卒。自然と珍奇といった博物学的視点、タブーと奇習といった美学的視点をテーマに世界中の奇妙なものを撮影している。写真集『奇界遺産 THE WONDERLAND'S HERITAGE』(エクスナレッジ)、ほか著書に『X51.ORG THE ODYSSEY』(講談社)。近日中に世界70カ国以上を旅して撮影した写真集「奇界遺産II」の刊行を予定。
・「X51.ORG



【検索ワード】  ・  ・  ・ 



オフィシャルアカウント&モバイル
  • twitter
  • facebook
  • RSS
  • モバイル用
  

ハピズムをBookmarkする