――信仰の有無に関わらず、さまざまな場面にスピリチュアル思想が盛り込まれている日本の冠婚葬祭。なんとな~くやり過ごしているものの、中には「アレ? これってありなの?」と思うようなちぐはぐなものも……。長年の海外暮らしで培ったガイジン的視点から、自身の体験をもとに、日本の婚礼を分析してきた映像ディレクター・古川幸卯子が、前回の“入籍”に続き、日本の戸籍制度について考えます。

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(c)yuko kogawa

 夫が虫垂炎(a.k.a.盲腸)になり、緊急手術をしました。切迫した緊張感の中、慌ただしく夫の下腹部に医療用前張り(ひょうたん型のシール)を張る看護婦さんが、突然キリッと私のほうに振り返って言いました。

「これから旦那様の前張りからはみ出たHAIRを剃りますが……やっぱり、奥さまが剃りたいですよね?」

 いいいええええ! 結構です! お任せします! 気を使っていただいてウフフフ……

 って、なんで〜(笑)!? あまりに予期せぬご提案だったので、つい笑い転げてしまいました。結婚してみて初めて遭遇することって、尽きないですねえ。
先日この連載の担当編集のC嬢もご入籍されたのですが……

C嬢「私たちは“本籍地”を、宝塚大劇場にしたんですよ〜」
YUKO「え! 本籍地って、自分ちの住所じゃなくていいの!?」 

 皆さんご存じかとは思いますが、入籍する2人の新戸籍の登録住所を本籍地といいます。これ、結婚成立時点での自宅の住所である必要はまったくなく、好きな場所にできるそうです。 

C嬢「えへへ……理由は、私が宝塚ファンだからです〜。ほかの例だと、ディズニーランドとか皇居、それに、あの尖閣諸島を本籍地にしている人たちもいるらしいんですよ〜☆ 私の上司夫妻なんて、アイドルオタクの聖地・中野サンプラザです! あっ、でも、中野サンプラザって取り壊しが決まったみたいですけど……」

 入籍・戸籍って、よくない意味で一番「ちゃんとしないといけない」、ちょっと息苦し〜くてあまり意味が無〜い手続きのひとつかと、認識していたけれど……BUTどうでしょう、このFREEDOM&当人達の楽しさ優先っぷりときたら!
この「婚礼編」第1回目で「ご祝儀って外側を幾重にも包むのに中身の金額は明記するのがむしろ正式作法だなんて、矛盾で面白い」と書きましたが、こういうTATEMAE(一応の制度)とHONNE(実情)がまったくつながらないにもかかわらず、反発するでなしに仲よく同居している感じ。ある意味で、とってもニッポンらしい、と思えてきませんか?

 だから、今ならわかるような気がします。美しく飾られたご祝儀袋が大切に包んでいるのは、お金ではなく「心・スピリット・送り主からのお祝いの気持ち」そのものなのだ、と。

 いやあ〜、大したもんだねえ。

 ニッポン生活文化にまつわるいろんな気づきをあたえてくれた「婚姻編」もこれで完了とし、次回からは新たに「子供まわり儀式編」をいっしょに学んでいきましょう!

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■市村あらため、古川幸卯子(こがわ・ゆうこ)
1975年、神奈川県生まれ。映像ディレクター、国際マンガ家。ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ・ファインアート科卒業。11年間のイギリス滞在を経て帰国。ロンドン時代よりTVCM、ミュージックヴィデオ、アニメーション作品など数多く手がける。著書に、福島第一原子力発電所事故後の東京の日常を描いた『3/11-TOKYO INTERRUPTED-東京一時停止-』(Carlsen Verlag社)がある。
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