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『ハンニバル』(東宝)

 2012年4月11日、ブラジル北東部に位置するペルナンブーコ州のガラニュンスで、一組の夫婦と、同居していた夫の愛人の計3人が、5件の殺人容疑で逮捕された。夫の名は、ジョルジ・ベウトラン・ネグロメンテ・ダ・シウベイラ、51歳。妻はイザベル・クリスティーナ・ピリス・ダ・シウベイラ、50歳。愛人はブルーナ・クリスティーナ・オリベイラ・ダ・シウベイラで、25歳と若く勝気な女性だった。

 妻のイザベルは、"ペルナンブーコのスイス"と呼ばれるほど気候が穏やかなこの田舎街で、手作り一口パイの「エンパーダ」を売り、一家の生計を支えていた。ピザのような記事に肉を包みオーブンで焼く「エンパーダ」は、ブラジル人にとって庶民の味。彼女の「エンパーダ」はおいしいと評判で、毎日飛ぶように売れていたという。

 イザベルの客だった人々は、逮捕のニュースを聞き、「あんなに穏やかな女性が人殺しをしたのか」と驚いた。が、間もなくして、吐き気を催すほど驚愕することになる。なんと、被害者の肉をミンチにして、「エンパーダ」に入れて客に売りさばいたとイザベルが供述したのだ。

 身の毛もよだつようなハンニバル事件を起こした3人だが、反省の色はまったくなく、被害者の命を奪ったジョルジは、「地球のために浄化したのだ」と、恍惚な表情を浮かべているという。殺害の手順を詳しく執筆した本まで発売している、ブラジルの人肉パイ事件。一体なぜ、このような奇怪な事件が起こったのだろうか。

 事件の主犯者であるジョルジの肩書きは、俳優、執筆家、ミュージシャン、マーシャルアーツのインストラクター。髪の毛は若干薄くなっているが、51歳とは思えないほど筋肉隆々でたくましい体つきをしており、娘ほど年の離れた愛人がいるのも納得できる風貌の男である。

 アフリカから伝わってきたカンドンブレーやペンテコステ派など、いわゆる超自然的な考えに慣れているブラジルにおいて、ジョルジは、ある日突然、独自のカルトを立ち上げた。そのカルトとは、「世界の浄化と、世界の人口減少」を実現を目指すもの。智天使と呼ばれる「ケルビム」と、大天使「アークエンジェル」の導きによるものだと、彼は明かしている。
 
 カリスマ的な雰囲気を持つジョルジだが、布教活動は積極的に行わず、その代り、イデオロギーを綴った単行本を出版。『統合失調症の啓示』という、まるで神病患者の闘病日記なのかと思うようなタイトルのこの本は、全34章で構成されている"浄化ハウツー本"でもあり、「悪魔に取り憑かれた女性を浄化するため」のノウハウも詳しく記載されている。

 実際に浄化したような下りもあり、「悪魔が宿る若い肉体を見下ろした私は、解放された気持ちで満たされていた。そして、金属板を手に持ち、皮をはぎ、解体していった。悪魔の肉は浄化儀式を行うため、我々が食した。残りは中庭に埋めた」という記述と共に、「女性の四肢切断」の挿絵まで掲載されている。

 実は、ジョルジは精神病を患ったことがある。病名は明かされていないが、本のタイトルである統合失調症だと思われる。しかし、彼は浄化儀式を行っていたときは頭はクリアな状態で正気だったと頑なに主張いいことをしたのだと胸を張っていると伝えられている。

 浄化儀式を実行に移したきっかけだが、ジョルジいわく、ケルビムとアークエンジェルの2大天使に、「悪として生を受けたわけではないが、生まれながらに"呪われた子宮"を持つ、女性」「聖書の『ヨハネの黙示録』に出てくるサタンを示す数字、悪の"666"の数字を持つ女性」を浄化することで、地球を浄化させよという使命を受けたから。

 ジョルジから、「666」の数字が、身分証明カードのID番号に含まれている女性を浄化対象に選ぶように命じられた妻と愛人は、若い女性たちに、「給料のよい子守の仕事がある」と騙して身分証明カードをチェック。ブラジルでは何をするにも、身分証明カードを提示しなければならないため、番号は簡単に見れたとのこと。そして、「666」の数字が入っている女性を自宅に招き入れ、ジョルジが浄化だと言い張りながら彼女たちを殺害したのだった。

 拘置所でメディアの取材を受けたジョルジは、「浄化儀式を行う前は、必ず神からサインが送られてきた」と告白。「私の頭の中に矢が突き刺さり、無数のイメージを見せてくれた」「この者たちを神に送り届けろ、そう、有無を言わさず命じられたのだ」と興奮した口調で語った。

 ジョルジは自分が『統合失調症の啓示』に記した通り、被害者に対して浄化儀式を行った。木づちで撲殺し、皮をはぎ、血抜きをして、バラバラにし、肉を食したのだ。人間の肉は思いのほか多く、3人ではなかなか食べきれなかったため、イザベルが「エンパーダ」に入れて売ればいいと提案。地球を救いたいジョルジは、一も二もなく賛成した。

 イザベルは、警察の調べに対して、気だるい表情を浮かべながら、「エンパーダに人肉を詰め込み、こんがりと焼いて。すべて売ったわ。バーや食堂にも大量に持って行ったし。そういえば、あんたにも売ったわ。あんた、うちのエンパーダをよく買ってたじゃない」と詫びれることなく明かした。

 完全犯罪にもなりえたこの事件だが、終わりはあっけなかった。イザベルが、被害者のクレジットカードで買い物をしたため、遺族がおかしいと思い、調べたところすぐに発覚したのだ。

 警察は、3人が住むジャルディン・ペトロポリスの家の裏庭から、2012年2月25日に行方不明になった31歳のジゼリ・エレナ・ダ・シウベイラと、同年3月12日に行方不明になった20歳のアレクサンドラ・ファルカン・ダ・シウベイラの遺体を発掘。家の中は、人が住んでいるとは思えぬほど荒れており、血のりのついた木づちや、服の切れ端などが発見された。

 また、この家には身元不明の5歳の娘が住んでいたことも明らかになり、警察に保護された。遺体が埋められていた場所を教えてくれたというこの幼女は、2008年に行方不明となった当時17歳だったジェシカ・カミラ・ダ・シウベイラ・ペレイラの娘ではないかと見られている。ジェシカも3人によって殺害された可能性が高く、『統合失調症の啓示』はジェシカを殺したときに書いたものではないかという疑いもかけられているという。

 地元メディアによると、警察は、ジョルジとイザベルが制作した、『エスピリト』というビデオも押収したとのこと。霊という意味のタイトル名がつけられたこの作品は、53分に渡って、夫の幽霊に苦しめられる女性を描いたもので、エマニュエル・シウベイラという役者が主演しているという。拷問を受けている女性が被害者なのか、本物の拷問なのかどうなのか定かではなく、警察は、このビデオが撮影された時期を特定しようと捜査を続けていると報じられている。

 地元メディアに「自分のことを無罪だと信じているのか?」と問われたジョルジは、「戦争の中で、無罪の奴なんているのか?」と返したという。警察は逮捕した3人が、最低でもあと5件の殺人事件に関与していると見ており、イザベルの常連客は「一体、どれだけの人肉パイを食べさせられていたのか」と驚愕していると伝えられている。



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