busman.jpg
『バス男』(20世紀フォックス・ホーム・
エンターテイメント・ジャパン)

――実力だけでは生き残れない、ハリウッドという世界に生きるセレブ。彼らを支えているパワーの源、幸運をもたらす見えざる手を分析します。

■今回のターゲット
ジョン・ヘダー 末日聖徒イエス・キリスト教会/(モルモン教)

 1977年10月26日にロッキーマウンテンの麓にあるコロラド州の田舎町フォートコリンズで、開業医だった父親ジェームズと主婦だった母親ヘレンとの間に誕生したジョン・ヘダーは、兄、姉、双子の兄、2人の弟という6人兄弟の大家族の中で育った。一家は、彼が2歳の時に、オレゴン州の州都であるセイラムに移住。公立校ウォーカー・ミドル・スクールから南セイラム高校に進学した彼は、ここで演劇に出会い、舞台に立つ面白さを知った。ブリガムヤング大学在学中に、監督を志す友人ジャレッド・ヘスと意気投合し、短編映画『Peluca』を製作。配給会社がなかなか見つからなかったものの、口コミでジワジワとカルト的な人気を集めるようになり、主演したジョンも「めちゃくちゃおもしろい」と評判に。波に乗ったジャレッドとジョンたちは、2004年に『Peluca』の長編版『バス男~ナポレオン★ダイナマイト~』を製作。公開されるとたちまち大ヒットとなった。その結果、ジョンは「ヘタレなオタク役を演じさせたら右に出る者はいない」と呼ばれるようになり、老若男女、幅広い層のファンを持つ喜劇役者となったのである。

 ジョンを一大スターへと押し上げた『バス男』は、ド田舎で超さえないオタクたちが繰り広げる脱力系学園コメディ。ジョンは熱いハートを持つ、キモくヘタレな負け犬を“べったり、ねっとり”と演じ、キモおもろい、クセになると業界人からも高く評価された。製作費用40万ドル(約3,100万円)に対して、興行収入は4,611万ドル(約36億6,300万円)という爆発的なヒットとなったこの作品は、その後、アニメシリーズ化され、これもまた大ヒットしている。

 学園コメディというと、放送禁止用語が飛び交い、猥褻シーンも満載というイメージがある。そんな学園コメディの主役を演じたジョンが、幅広い世代から愛されるようになったのには、大きな理由がある。この作品には、「ファック」「シット」「ビッチ」など、ティーンが日常的によく使う汚い言葉が一切出てこないのだ。自己陶酔した主人公が目を閉じてボーッと呆ける、ナチュラル・ハイになっているシーンは頻繁に出てくるが、薬物をキメるシーンもない。セックスなどの猥褻シーンも皆無なのだ。ジョンと監督のジャレッドが出会ったのは、ブリガムヤング大学だと冒頭で紹介したが、この学校は末日聖徒イエス・キリスト教会(以下、モルモン教)教育システムが経営する私立大学。11月6日に行われたアメリカ合衆国大統領選挙でオバマ大統領と戦った、共和党ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事も、ハーヴァード大学でMBA・法務博士号を取得する前に通っていた「モルモン教徒が誇る高等教育機関」なのだ。『バス男』にはブリガムヤング大卒のモルモン教徒が多く携わっているため、「18禁」にレーティングされることが大半の青春爆笑コメディとしてはとても珍しく「PG」にレーティングされた。「PG」とは「やや問題となるシーンがあるので、小さい子供を連れた親は事前に心構えをしておくこと」という、緩いもの。「PG」だからこそ、幅広い年齢層が視聴することになり、爆発的なヒットとなったのだ。

 この作品は「ティーンが好きな学園モノは、登場人物たちが悪い言葉を使い、飲酒したりタバコを吸ったり、ドラッグをキメたりするシーンが多い作品」という定説も覆した。ティーンを中心とした、一般の視聴者の投票によって決められる「05年度MTVムービー・アワード」で見事、『バス男』が最優秀映画に輝いた。ジョンも最優秀新人賞と最優秀ミュージカル・パフォーマンス賞を獲得し、瞬く間に「キモかわいい」がもてはやされるようになったのだった。






オフィシャルアカウント&モバイル
  • twitter
  • facebook
  • RSS
  • モバイル用
  

ハピズムをBookmarkする