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週末は彼に手料理を振る舞って!

 今でこそ、国同士の争いの原因といえば、石油や海底資源などのエネルギー問題だが、16世紀のヨーロッパでは違った。なんの話かというと、「スパイス=香辛料」である。インド航路をめぐってポルトガルやベネチアや北アフリカ諸国がドンパチやったのも、インド原産のコショウ欲しさに尽きる。東西交流とか地理上の発見とかは余録に過ぎず、ヨーロッパ諸国は、いかにしてスパイスをゲットして運ぶかということに血眼になったのである。

 なかでも、「コショウ」「シナモン」「クローブ」「ナツメグ」は、タンパク質を主に肉でとっていたヨーロッパに持ち込まれるやいなや、瞬く間に必要不可欠なものとなった。それまでは全部岩塩ですませていたのに……。これらのスパイスは防腐・殺菌剤として、また、消化を助ける食欲増進剤としても有効で、疫病の予防にも効果がある。スパイスの薬効は、古代メソポタミアの記録に残されているほか、古代エジプトでミイラを漬け込むのに「ニンニ」「シナモン」「アニス」「クミン」を用いた――と、ここまでは建前。今回紹介したいテーマは、「スパイスには呪力がある!」というだ。

 呪力を持つスパイスといえば、まずは「ニンニク」。吸血鬼除けにドアや窓辺につるすというのは比較的新しい信仰で、古くは、妖精がバターにいたずらするのを防ぐため勝手口に、取り替え子を防ぐためゆりかごに、蛇除けやサソリ除けのため戸口にと、ぶらさげておいたもの。なぜニンニクなのか? 種明かしをすれば、妖精はともかく、虫はニンニクの臭気に含まれる「アリシン」という物質を嫌い、寄りつかないからだ。

 また、邪眼や疫病からのお守りとして身につける習慣もあり、現代でも、食中毒防止のために食事のたびに生ニンニクをかじる国や地域が存在する。ひ弱な外国人などは、ニンニクが切れたとたんにゲリピーになるというから、霊験あらたかなのも明白だ。

 お守り・魔除けとしては、「クローブ」も負けてはいない。リンゴなどの果物にクローブをびっしり刺し、シナモンをまぶして乾燥させた「ポマンダー」。昔は魔除けとして、今はタンスにつるす「防虫剤」としてヨーロッパで使われている。してみると、昔は「魔」を運んでくるのは虫や小動物だったのかもしれない

 「唐辛子」も魔除け・厄除けとして、世界各地で用いられている。形が男根と似ているから、という説があるだが、果たして共感できる人は何人いるだろうか……。とにかく、今もイタリアや台湾では、唐辛子を数珠つなぎにしたデザインのお守りが、土産物として売られている。

 「クローブ」や「アニス」など、強い香りを持つスパイスは、浄めの力を持つと信じられてきた。古代中国では神前に出る前に“クローブ水”で口をすすいだといわれる。また、古代ローマでは、アニス入りのワインは飲用すれば若返りの薬、枕に振りかければ夢魔をはらうとされた。

 スパイスの効果は魔除けだけではない。魅惑的な香気は邪気をはらうだけでなく、願いをかなえる「魔」も呼び込むと信じられた。

 ポール・ヒューソンは著作『魔術修業』で、「コリアンダー」を用いた愛の魔術を紹介している。手順は、“浄めた杯に、7粒のコリアンダーと水を入れ、恋しい相手のことを念じながらすりつぶし、相手の名前と呪文を唱える。これを媚薬とし、相手の飲食物に混ぜる”というもの。コリアンダーは、エスニック料理や焼き菓子によく合うスパイス。相手のことを思いながら、心をこめて作れば媚薬料理の出来上がりだ。

 また、媚薬とは毒薬でもある。ある種の鎮痛剤の正体が、危ない薬であることは知られている通り。古代においても、「ローリエ」「マンドラゴラ」「ヒヨス」「ベラドンナ」「ナツメグ」「ウイキョウ」「ニガヨモギ」「クワの実」などがあり、毒薬としての効能を持つものが多数。古代ローマの将軍ルクレスは、妻と愛人を持っており、彼女たちが競って媚薬を盛ったので中毒死したとか。なんの媚薬か知らないけれど、果報者というか、自業自得というか……。

 内服だけでなく、スパイスを塗ってセックスの時に使う文化も。特に、インドの秘術書『カーマ・スートラ』では、スパイスは必需品。「黒コショウと蜂蜜とあれこれを混ぜたものを塗ってすると女性が失神する」って、そりゃ、そうでしょうね……。何を調合したのかわからない、なぞのスパイスよりも、肥後ズイキのほうがいいよ(実話)!

 と、ここまでスパイスについて説明してきたが、果たして、スパイスの持つ効能はいかがなものか? 現代では、スパイスは料理などに使うポピュラーな調味料。スーパーや輸入雑貨店で簡単に入る。百聞は一見にしかず! トリップ・催淫効果を持つといわれるスパイスを挙げながら、用法を紹介しよう。



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