(東北編はこちら)
(関東編はこちら)

koshien.jpg
神への“祈り”があと一歩届かず……
画像は第94回全国高校野球選手権大会HP

 昨日、“第1大阪代表・大阪桐蔭vs第2大阪代表・光星学院”という、春のセンバツ決勝同様の組み合わせで決勝が行われた夏の甲子園。結果は3-0で春のセンバツに続き、大阪桐蔭の勝利で幕を閉じた。惜しくも東北初の甲子園制覇を逃した光星学院だが、宗教高校の強さを見せつける大健闘だったことに変わりはない。

 そして、これまで東北、関東エリアを紹介してきた当連載の締めくくりとして、甲子園において、圧倒的な知名度と実力を誇る宗教高校が林立するエリアであり、光星学院にも所縁のある関西圏も紹介しておきたいと思う。

 まず、その代表格とも言えるのが、「PL(パーフェクト・リバティ)教を」母体とするPL学園。春夏通算7回の優勝を誇り、選手がバッターボックスに入って胸元のお守りをギューっと握るシーンや、スタンドに巨大な「PL」の人文字を描く応援などは、高校野球ファンにとってはお馴染みの光景だろう。近年、今大会の覇者である大阪桐蔭や、大阪大会準優勝の履正社といった学校の台頭で甲子園への出場は減ったものの、「母校の校歌は忘れたけど、PL学園の校歌は歌えるぜ!」というPL教ならぬ、熱心なPL学園“教”信者的ファンまで生んでしまうほどの人気校だ。お守りのエピソードからもわかる通り、朝練の後の「朝詣り」、午後の練習前のお祈り、練習後にする「献身(みささげ)と呼ばれる清掃、その後の「夕詣り」といった、宗教行事が日常生活の中に組み込まれているのも同校ならではである。

 そんな、PL学園野球部を語る上で外せないのが、野球部専用の寮である「研志寮」と、“付き人制度”である。ここでは「3年神様、2年平民、1年奴隷」というありがたいカースト制度が敷かれており、1年生は上級生のユニホームの洗濯やスパイク磨き、マッサージなどの身の回りの世話、夜食のチャーハン作りまで、徹底的な良妻賢母ぶりが求められる。この寮生活があまりにハードだったため、「1億円もらっても、1年生には戻りたくない」というのが、PL学園野球部OBの共通意見だとか。

 ただ、この寮、制度共に、後輩への暴力事件により、現在は廃止となっている。清原和博(PL学園-西武-巨人-オリックス。2008年に現役引退)をもってしても、「練習中は先輩に殴られることはなかったから、寮生活よりも気楽だった」「今でも(PL学園の先輩の)吉村(禎章、PL学園-巨人)さんの前では直立不動」と言わしめるほどの“伝統”も、時代の流れには勝てなかったようだ。

 そして、PL学園と並んで有名なのが、今大会の準々決勝で大阪桐蔭に破れた奈良の天理や、智弁学園および和歌山の智弁学園。天理教を母体とする天理は、春夏通算で3回の甲子園優勝を誇る強豪校。甲子園で流される校歌は、厳密には「天理教青年会会歌」であり、父兄も熱心な信者が多いことでも知られる。余談になるが、前述の清原も中学3年時は天理に入学するつもりで、母親もそのために一時、天理教に入信していたほど。しかし、清原のPL学園入学が決まった途端、天理教を脱退し、PL教に宗旨替えをするほどの徹底ぶりだったとか。ただ、信心深いと思われる天理も、野球部に関しては度重なる暴力事件、飲酒・喫煙、強制わいせつ事件により、スポーツ推薦、寮制度の廃止、対外試合禁止処分、出場辞退などの不祥事が目立つ。教祖(おやさま)の教えはいずこへ……。

 一方、辯天宗を母体とする智弁学園と智弁和歌山の兄弟校は、甲子園ではクリーンなイメージで知られる。巨大な「C」の人文字を作る応援スタイルでも知られる両校だが、優勝経験のない智弁学園と比較して、春夏通算3度の甲子園優勝を誇る智弁和歌山が知名度的にも一歩リード。その智弁和歌山の野球部は、1学年10人、県外出身者は2人までと、私立の強豪校としては珍しく、人数制限を課している。県外出身者を制限するのは、あくまで“和歌山県の代表”としての出場にこだわるため。いわゆる“外人部隊”が多い他の私立学校とは一線を画しており、結果的に、県内外にもファンを多く獲得することとなった。しかし、今年の夏の甲子園では惜しくも初戦敗退。片や、不祥事をもろともせずに甲子園へやってきた天理は見事にベスト8に入るという皮肉な結果に。信心深さや品行方正さが必ずしも勝利に結びつかないことを、天理教に再確認させられてしまった。

 これまで紹介した学校以外にも、全国には宗教系の学校が数多く存在している。そんな中で、甲子園に出場することで学校、ひいては宗教としての知名度を上げて生徒(あわよくば信者も)を獲得したい一心からか、野球部への投資が惜しまれない宗教学校。そして、その恵まれた環境で野球に打ち込み、憧れの地・甲子園でプレーすることだけを目標に宗教学校に入学する選手たち。双方の思惑が一致した結果、一部では“教育としての部活動”から本質が逸れていくと問題視されている現代の高校野球。宗教と教育と野球という、難しい問題が複雑に入り混じった甲子園は、視点を変えるだけで、“爽やかな高校球児”以外にも、さまざまな側面を見せてくれたのかもしれない。
(高橋ダイスケ)

参考文献
『男道』(清原和博著、幻冬舎)



【検索ワード】  ・  ・  ・ 

【おすすめ情報】


 コメントを投稿する

ライターや他人への誹謗中傷を含む内容、本記事と関係のない内容、その他公序良俗に反する内容は、削除いたします。

オフィシャルアカウント&モバイル
  • twitter
  • facebook
  • RSS
  • モバイル用
  

ハピズムをBookmarkする
  • HOME
  • 流行・ニュース
  • > 幕を閉じた夏の甲子園……活躍したのは“信仰心の強い”関西エリアの宗教高校だった!?