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『ロンドンオリンピック総集編』(朝日新聞出版)

 この夏、猛暑にうだる日本の寝不足人口を激増させたロンドン五輪。日本勢のメダルラッシュは記憶に新しいところ。金7、銀14、銅17は史上最多の快挙です。20日に行われた東京・銀座でのパレードには50万人が詰めかけ、その経済効果は80億円との説も。

 なかでも一番人気は、男子体操・個人総合で金メダルを獲得した内村航平選手。パレード―について、「ほんのちょっとアイドル気分を味わえた」と照れながら語ったとのことですが、ご本人はその人気の理由をご存じなのでしょうか……。

 内村選手の人気の秘密――。それは「世界一美しい体操」でもなく「無垢な笑顔とドヤ顔のギャップ」でもありません。さわやかな童顔とはミスマッチな、ボーボーのワキ毛なのです。ネットの掲示板には女性たちによる、「(内村選手のワキ毛を)抜いてお守りにしたい」、「内村航平きゅんの採れたてのワキ毛をざるそばの上にパラッと散らして、そばと一緒にゆっくり味わいたい」「小人になって住みたい」等々の書き込みが殺到。極めつけは「内村くんのワキ毛の中で借り暮らししたい」……そ、それは魅力的すぎます。

 ワキ毛をウリにするAV女優は時々いますが、男の腋毛が一般人に注目されるのは異例の事態。さすがに「食べる」ことは難しいですが、お守りにするぐらいだったらできそうな気がしなくもないです。そもそも、「毛」はお守りになるのでしょうか?

 戦国武将や先の大戦では、兵士がお守りとして女性のナマ陰毛か、あるいは陰毛が描かれた春画を持参しました。女性の陰毛は多寡にかかわらず、運気が上がると信じられていたためであったり、豊穣をイメージさせる性器信仰がルーツという説が一般的です。やがて「勝ちに行く」ためのアイテムとして、勝負ごと、特にギャンブルには陰毛を忍ばせていくといいと信じられるようになりました。筆者も麻雀に向かう知人男性に頼まれてブチ抜いて恵んでやったところ、3万8,000円勝ちやがりました。もちろん、おごらせましたとも。また逆に、漁師や鳶職人、武者など危険をともなう職業に就く人は、無毛女性の姿絵を忍ばせ「毛がない」=「ケガない」との願いを込めたそうです。

 けれども陰毛を除けば、以外と毛をお守りにする風習は少ないようです。春画においても、ワキ毛はほとんど描かれていません。歌川国貞や歌川国芳の作品はワキ毛も精緻に描き込まれていますが、これらは彼らの趣味、もとい例外といえましょう。ほかの三流絵描きでは、ボーボーのワキ毛が登場するのは女を手込めにする盗賊ぐらい。代表的なのが「歌満くら」第九図。毛むくじゃらのおっさんが若い女を手込めにする画で、女に噛みつかれてでも思いを遂げようとする場面は迫力満点。当然、おっさんはワキ毛ボーボーです。どうやら、ワキ毛は悪党のアイコンらしいですね。

 ちなみに中国・インド・イスラム圏・西洋画に至っては、腋毛パイパンかと思うほど、女性だけでなく男性までもが見事に腋毛レス。インドのある民族は宗教的な理由で、女性はすべての体毛を処理します。古代エジプト人は頭髪と陰毛を剃りました。それぞれの国にさまざまな理由がありますが、気候風土の問題が大きいのでしょう。

 毛髪を記念物にするのは世界的に見られます。遺髪として大事にするのは一般的だし、日本では生まれたばかりの子どもの毛髪を使った「胎毛筆」を作ったりします。要は親バカなのですが、バージン毛先が貴重品だというのが隠れた理由なのかもしれません。また名作『若草物語』には四姉妹が自分の髪の毛を編んでブローチを作り、母親に贈ったとのエピソードが紹介されています。19世紀のヨーロッパでは、愛の表現としての「センチメンタルジュエリー」、故人の思い出として「モーニングジュエリー」が流行していました。いずれも髪の毛を用いた装身具です。

 さて本題です。ワキ毛はお守りになるのでしょうか?

 中世の昔から、英雄が出陣する際、家を守る女性は、彼の毛を留守中の守りとしました。その毛に艶がなくなったり、色が変わった時には手厚く手入れをし、無事を祈ったそうです。それが髪の毛か陰毛か、はたまたワキ毛なのかは、確認する術がありませんが「毛」をお守りとしていたのは事実。そして、ワキ毛は陰毛よりも遅れて生えてくる、いわば最も男性性の強い毛であります。留守中のお守りとしては、ワキ毛が最適なのかもしれませんね。

 また、ヨーロッパの貴族社会では男性が脇の下にハンカチを忍ばせ、お目あてのご婦人に近づくと腋臭プンプンのハンカチをパタパタして誘惑したそうです。ワキ毛に含まれているフェロモンで、女性を落とそうとしていたのでしょう。内村選手も、ワキ毛ではなくワキ臭を香水にしたら売れるんじゃないかと思うのですが、コナミさん、どーですか?
(よいこ)



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