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何かがのりうつったかのようなガガ姐さん

 世界一信者が多い宗教、キリスト教。ゴスペルやコンテンポラリー・クリスチャン・ミュージックなど、クリスチャン向けの音楽は世界規模で展開されており、一大ビジネスとなっている。

 しかし、キリスト教への信仰心を歌うのは、何も、クリスチャン・ソング歌手だけに限ったことではない。ポップ歌手やロック歌手からラッパーまで、様々なジャンルで活躍するアーティストたちも、宗教をテーマにした曲を作っているのである。

 今回は、そんな宗教色が濃い歌をリリースし、世界的に大ヒットさせた「宗教を歌った曲 ベスト5」を選出してみた。

■第5位 「レット・イット・ビー」(1970)/ビートルズ

 「ぼくが悩み悲しみの淵に沈んでいるとき/マザー・メアリーが現れて/賢明な教えを囁いてくれた/"なすがままに流れに身をまかせばよいのです"と」という出だしで始まる、ビートルズの名曲「レット・イット・ビー」。この「マザー・メアリー」とは、一般的に「聖母マリア」のことを指す言葉であり、多くの人が「聖母マリアが、悩み苦しむ青年を導いてくださる作品」だと捉えている。

 しかし、作詞したポール・マッカートニーいわく、「マザー・メアリー」=「自分の母親メアリー」とのこと。「(薬物をやりまくり)色々な意味で壊れかかって、精神的に追いつめられていた60年代のこと。14歳で亡くなった実母が、突然、夢に現れたんだ」「この時のスピリチュアルな経験をもとに『レット・イット・ビー』を書いたんだ」(伝記本『ポール・マッカートニー メニー・イヤーズ・フロム・ナウ』)と語っており、「聖母マリア」のことではないと明言している。しかし、「この曲を聴いた人が、聖母マリアだと捉えるのは当然だろう。それでいいんだよ」「この曲で信仰心を高めてくれれば光栄だ。こんな世の中に生きているのだから、信仰する心を持つのは素晴らしいことだしね」とも述べており、宗教的な気持ちで聴いてほしいと思っていることも公にしている。

 5番目のビートルズと呼ばれていたキーボード奏者ビリー・プレストンは、後に、「この曲にはゴスペル・テイストを入れたいと相談された」と告白。ポールが制作の時点で、「マザー・メアリー」を掛け言葉にし、聖母マリアを強く意識していたことを裏づけるエピソードだといわれている。なお、ジョン・レノンは、この曲はクリスチャン色が強いと認識し、かなり嫌っていたと伝えられている。

■第4位 「ジューダス」(2011)/レディー・ガガ

 反社会的で過激でカッコイイというイメージが強いMVの「ジューダス」は、イエス・キリストを裏切ったユダのことを歌った、キリスト教がテーマの曲である。ガガは「MVで物議を醸す点があるとすれば、クリスチャン・ラクロワとシャネルを一緒に身に着けているところかしら」と発言しているが、多くのクリスチャンは最低だと激怒しており、この曲を境に、ガガに対する見方が変わったという人も少なくない。

 イエスの妻とされるマグダラのマリアの視点で書かれた歌詞には、銀貨30枚で夫を売ったユダを「愛している」と繰り返し綴られており、キリスト教の中でも特に厳格なカトリック信者たちは「とんでもない」と批判。ガガは、「宗教的ではなく社会的なステートメントを込めた曲なのよ」と主張するが、イエスと見立てた男性にイバラの王冠のようなヘッドピースをかぶせたり、「聖書の世界では、私は懺悔する資格もない女。淫らな娼婦」というくだりもあり、マグダラのマリアを侮辱しているという声もある。

 ちなみに、マグダラのリアを「罪深い女」だと捉え、「娼婦だった」という説もあるが、聖書には、はっきりと記されていない。

 淫らな修道女に扮するなど、かねてからガガにイライラさせられてきたカトリック同盟会長は、「ジューダス」MVリリース後、とうとう「いい加減にしてほしい」という声明を発表。ファンの間でも、賛否両論のある作品となっている。

■第3位 「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネイム」(1987)/U2

 直訳すると「名もなき道」というタイトルになるこの作品。当初、「道=ストリート」とは、ボノが、チャリティーコンサート「ライブエイド」で訪れたエチオピアのストリートに違いないといわれた。しかし、彼は後日、曲の舞台は、祖国アイルランドだと告白。「アイルランドでは、裕福層、貧困層、カトリック信者、プロテスタント信者、それぞれが、くっきりと分かれて生活している。どこのストリート出身かで、その人がどんな人なのか、どんな宗教を信仰しているのかがわかってしまうんだ。だからストリートに名前がない、そんな場所について歌いたいと思った」と述べ、「この曲は、自分のスピリチュアルがどの位置にあるのかをスケッチしたもの」だと明かした。

 しかし、多くのクリスチャンは、ボノはこのストリートを「天国のストリート」と掛けていると確信。コンサートでも、この曲を歌う前に観客に向かって「オレは行くぞ、みんなついてくるかい?」と呼びかけることが多く、敬虔なカトリック信者のボノらしい、天国への憧れを歌った宗教的な名曲だといわれている。

 ほかにも「神がユダヤ人に約束した地、カナンを目指すヨシュアの気持ち」を歌ったという説、カトリックとプロテスタント、宗教が違ったボノの両親のラブソングだという説、色々あるが、どれも宗教的な意味合いが深いものばかり。そして、そのいずれの解釈もボノは受け入れているようだと伝えられている。

■第2位 「天国への階段」(1971年)/レッド・ツェッペリン

 ドリー・パートン、U2、フー・ファイターズ、ジミー・キャスター、メアリー・J・ブライジなどなど、数多くのミュージシャンによってカバーされている、ロック史上最も素晴らしい曲の1つだとされる「天国への階段」。作詞したロバート・プラントは、「お金をため込むことに必死な女性がいるが、そんなことをしても人生は満たされず天国にも行けない」ことを歌っているのだと説明している。ただし彼は、「日によって曲に対する解釈が変わる」とも述べており、「宗教的ではあるが、抽象的なのが大ヒットした大きな理由だろう」という見解を示している。

 ロバートは、バンドがレコード制作をするために合宿していたヘッドリィ・グランジ邸の暖炉の前でジミー・ペイジと座っていたときに、一気に作詞したことも告白。複数のインタビューで、「急に手が動き、紙にスラスラと文字を書きだしたんだ。最初の2節をね。読み返してびっくりしたのを覚えている」「自分が書いたんじゃない。誰かに書かされた詞だという感じだ」と告白しており、作詞作業は神がかりなスピリチュアルな体験だったと明かしている。しかし、一部では、この彼の体験を「悪魔憑依」だと捉えている人たちもいる。なぜなら、この曲を逆回転すると悪魔崇拝を薦めるメッセージが聞こえるような気がするからだ。ロバートは、この説を真っ向から否定しており「本当に悲しい」とコメント。しかし、作曲したジミー・ペイジが秘密結社「黄金の夜明け団」から独立した魔術師アレイスター・クロウリーの悪名高き家を購入していたこともあり、この説は今なお根強く生き続けている。

■第1位 「ジーザス・ウォークス」(2004年)/カニエ・ウエスト

 レコード・プロデューサーからラッパーへと転身し、大成功を収めたカニエ・ウエスト。デビュー・アルバムに収録された「ジーザス・ウォークス」は、ジーザス=イエス・キリストに対する想いをダイレクトに歌った曲。カニエは、2002年10月に居眠り運転で起こした事故で重体となるが、つらいリハビリを経て見事に復帰。「神に助けられた」と確信し、イエスについての信仰心をラップに込めることにしたのだという。内容は、「アル中、ドラッグ売人に娼婦といった社会の底辺で生きる人間でも、イエスは常に歩き、見守ってくださる」というものなのだが、あまりにも宗教色が濃いため、多くの大手レコード会社から「こんなラップはうちでは出せない。まずラジオが流さないだろう」と断られたとのこと。最終的に、ロッカフェラ・レコードと契約を結べたのだが、次にMV制作で問題が発生してしまった。

 最初に制作したMVは、アル中、ドラッグ売人、娼婦が、天使に命を助けられて、牧師に扮したカニエが説教をするバプティスト教会に導かれるという内容。教会でカニエや信者たちが、信仰心からハイになる様子がリアルに描かれているのだが、カニエは「これでは自分が伝えたいことがきちんと伝わらない」として、自腹で2作目のMVを制作することに。今度は、看守から暴行を受ける囚人や、警察に追われるドラッグ売人に薬漬けにされている娼婦、白人至上主義を唱える秘密結社KKKの男性に燃え上がった十字架から火が移るという過激な内容で、大きな論議を巻き起こした。だが、これでも満足できぬカニエは、ささらにもう1作――カニエの行くところ、どこにでもイエス・キリストが付き添い、時には奇跡を起こしてくれる、というシンプルな内容の作品も制作。カニエいわく、3作見て、初めて彼が本当に伝えたいメッセージが見えると説明している。

 実はカニエの父親は、黒人解放武装組織「ブラック・パンサー党」の元党員で、現在クリスチャン・カウンセラーとして活動をしている、信仰心のとても強いクリスチャンである。カニエは父親から強い影響を受けており、多くのインタビューで「自分のように、悪いことが起こっても、その後には必ずいいことが起きる。すべては神のお導きなのだ」と発言。ギャングスターの音楽であるラップで、見事に神を歌い上げた宗教曲だとして、多くのクリスチャンから愛されている。

 なお、世界中で数多くの歌手がカバーしている「アメイジング・グレイス」は、いわゆる歌謡曲ではなく、賛美歌である。作詞したのは18世紀の牧師のジョン・ニュートンで、ほかにも「Glorious Things of Thee Are Spoken」などを残している。






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