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悩み相談の行きつく先はスピリチュアルってことね

――実力だけでは生き残れないハリウッドという世界に生きるセレブ。彼らを支えているパワーの源、幸運をもたらす見えざる手を分析します。

■今回のターゲット
オプラ・ウィンフリー (ニュー・エイジ)

 
 1954年1月29日、米国ミシシッピ州の田舎町コスキアスコで誕生したオプラ・ウィンフリー。17歳でミス・ブラック・テネシー・コンテストで優勝したことがきっかけとなり、地元のラジオ局の番組に出演するようになった彼女は、その後、地元テレビ局に入社。夕方のニュース番組を担当する初の黒人女性ニュースアンカーになった。8年後、シカゴのTV局からスカウトされた彼女は『AM シカゴ』という日中に放送されるトーク番組の司会者に就任。1986年9月、『AM シカゴ』は番組名を『オプラ・ウィンフリー・ショー』に変え、全米各地に向けての放送を開始した。中流階級の主婦にターゲットを絞り、彼女たちの目線に立ち語りかけるオプラの番組は、放送開始直後から高視聴率を獲得。2011年に放送終了するまでの25年間、最も影響力のある番組のひとつとして君臨していた。

 庶民の味方、弱い者の味方であるオプラにアメリカ人は心酔し、彼女がすすめる本はベストセラー入りし、商品は飛ぶように売れた。彼女が推薦する政治家も好感度がアップ。バラク・オバマが大統領になれたのは彼女の力添えがあったからだとも言われているほど。このようにオプラの影響力は絶大であり、世界で最もパワフルな人物だと讃えられているのである。

 オプラは90年代から『オプラ・ウィンフリー・ショー』で、頻繁にスピリチュアルをテーマに取り上げるようになった。スピリチュアルは、宗教を邪魔するものではないと主張し、自己を高めるため、より良い人生を送るためにスピリチュアリティを高めようと語りかけ、多くの視聴者の心を捉えた。「まるでオプラ教だ」と眉をひそめるクリスチャンも多いのだが、オプラがここまでスピリチュアルにこだわるのには、大きな理由があった。

 実は、オプラは複雑な貧しい家庭の出身である。オプラの両親は結婚をしていなかっただけでなく、真剣交際するつもりもなかったそうだ。「できちゃったから、産んだ」という形で誕生したオプラは、貧困極まりない階級に育った。お金も物もないが、何かを与えたいと思った祖母は、オプラに文字を教え、聡明な彼女はなんと3歳で読み書きできる力がついたとのこと。地元の教会に通い始めると聖書をむさぼるように読み、たちまち暗唱できるようになったという。周囲の大人は「まるで説教者だ」と驚いたそうだが、オプラ独特の「人を説得させるような話し方」は、祖母、教会の牧師から学んだものだと言われている。

 頭脳明晰であったオプラだが、母親に引き取られた後、母の男友達や親族から性的虐待を受けるようになり荒れた。悲惨な家庭環境から逃げ出すために、13歳で家出をし、14歳で妊娠し出産。赤ん坊は生まれて間もなく亡くなるという悲劇にも見舞われた。このことを『オプラ・ウィンフリー・ショー』で公にした彼女は、自身の暗い過去を語ることができる勇気ある司会者だと一目置かれるようになった。そして、悩みや問題を抱えている者をゲストとして招くようになり、番組は「迷える者を助ける」というスタイルに成長していった。ゲイ、バイセクシュアル、トランスセクシュアル、トランスジェンダー問題も積極的に取り上げている。苦しく暗い過去を持つ彼女の番組に「スピリチュアル」というエッセンスが組み込まれるようになったのは、ごく自然な流れだったのだ。

 オプラが幼い頃、祖母に連れられた教会は「バプテスト教会」であった。聖書を唯一の信仰のよりどころにする聖書主義であるバプテストで、彼女はキリスト教を深く学んだ。しかし、20代後半にカリスマ的牧師のミサで「神は嫉妬し」というくだりを聞き、疑問を感じ始めたという。「神は嫉妬などしない存在。神は愛する存在なのではないか」という考えを持っていたオプラは、その後、さまざまな宗教、神について独学で勉強。『オプラ・ウィンフリー・ショー』でも、「神はひとつだが、世界にはさまざまな宗教がある。神へ通じる道は、ひとつだけではない」と主張したことがある。その時は、敬虔なクリスチャンであるスタジオ観覧客から、「神へ通じる道はただひとつ、イエス・キリストを通した道だけだ」と猛反論され、大きな論議を巻き起こした。

 このようなこともあり、オプラは宗教からではなくスピリチュアルな方面から、人間の弱さを克服しようとアプローチをかけるようになる。1994年ごろからは番組で自己啓発について取り上げることが多くなり、1998年には「人生を変えよう」をテーマにしたエピソードを多く放送するようになった。仏教徒やニュー・エイジのグルを招くようになったのもこの頃から。2001年の『Live Your Best Life Tour』で、観客と共に瞑想をした際には、「神を思い浮かべなくてもよい。誰にも頼ることなく呼吸することで自ら心の安定を得ることができるのだ」と伝授している。

 このように、「神に頼らず、自分自身で何とかしよう」というメッセージを視聴者に送るようになったオプラ。2007年には、キリスト教、ユダヤ教、仏教、イスラム教などで伝えられている「引き寄せる法則」を説く自己啓発本『ザ・シークレット』を番組で紹介。欲しいものを手に入れるのは自分の力で、自分を変えるのは自分自身と、この本を強く推薦した。

 オプラはもはやクリスチャンではない、ニュー・エイジを信じているのではないかという声が高まる中、彼女が「ニュー・エイジ信仰者」であることを裏づける行動をとった。2008年、エックハルト・トールが執筆した『ニュー・アース』を推薦するとし、10週間に渡るオンラインセミナーを開いたのである。

 エックハルトは、ケンブリッジ大学の指導教官だった20代後半に重度のうつ病にかかった末、霊的体験をしてスピリチュアルな悟りを開いたスピリチュアル・マスター。世界中でスピリチュアル講演を行っており、ニュー・エイジのリーダーとも言われている。『ニュー・アース』は、意識を変化させ、目覚め、より良い人生を手に入れ、より良い世界を作ろうと呼びかけるもので、人類の究極の幸福について説明する本。人種、宗教、文化、思想、性別、すべてを越えて人々の魂に呼びかけるものであり、仏教や禅など東洋思想の世界観がふんだんに含まれているのが特徴だとされている。

 オンラインセミナーでオプラは、「神は私の心の中にあるもの。人は誰もが神聖な存在なのである」「私の救世主は私の中にある」「人は生まれながらに罪を背負ってはいない」とし、「イエス・キリストは単なるイメージ。みな誰もがイエスなのである」と発言。イエス・キリストは救世主であり、人間の罪をすべて引き受けてくれたと信じているクリスチャンに大きな衝撃を与え、バッシング運動も始まった。

 さすがにマズイと思ったのか、オプラは2011年、『オプラ・ウィンフリー・ショー』を放送終了させるにあたり出演した朝のバラエティ番組で、「ここまで成功できたのは、イエスのおかげ」とコメント。この言葉にクリスチャンたちは、「人は間違いを起こすもの。オプラも迷える子羊だったのだろう」とホッと胸をなでおろした。総資産30億ドルとされ、黒人女性初の億万長者になったオプラは、ハリウッドで最も寄付をする慈善家としても知られており、アフリカに学校まで設立している。彼女の宗教観に疑問を持つクリスチャンは今なお多いが、彼女の貢献は誰もが認め、一目おいているのだ。

 「イエスのおかげ」発言をしたものの、オプラがニュー・エイジにどっぷりはまっていることは、紛れもない事実。しかし、彼女が今後、その考えを変える可能性はある。なぜなら、「私は、より良い人生を送るのにはどうしたらよいのかを、みんなと一緒に探索し続けていく」と公言しているからだ。

 雑誌、ラジオ番組だけでなく自分の放送局まで開局したメディアの女王であるオプラは、まさしくアメリカを代表するスピリチュアル・リーダー。ニュー・エイジ思想を広めることにより、自分を救うのは自分しかいないのだと人々を勇気づける救世主なのである。






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