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人ごとじゃありません

 占い師が毎朝ワイドショーを賑わせているのは日本だけではなかった。

 中世から続く魔女文化の歴史を持ち、現代でも「魔女」「占い師」「呪術師」が多く存在する東欧のルーマニアで、人気魔女が逮捕され、芸能界や政界を巻き込んでの一大スキャンダルになっている。

 ルーマニアでは、「魔女」はれっきとした職業である。ルーマニア人の70%が占いを信じており、魔女や占い師が社会的にも制度的にも認知されている。芸能人や政治家にはお抱え占い師がいて、大統領選では魔術師たちが裏で暗躍しているともいわれている一方で、職業魔女に所得税を課税する法案が提出された際には、「魔術で呪い殺す」と議員を脅迫する魔女が現れるという物騒な事件も起きている(現在は可決され職業魔女も税金を払っている)。

 3月8日付の朝日新聞によると、逮捕されたのはメリッサとバネッサという名の30~40代の魔女。2人ともテレビにも出演する人気魔女だった。その人気魔女がなぜ逮捕されるにいたったか? その辺の事情は、先日占い師からの奪還が報じられた、オセロ・中島知子騒動と通じる部分がある。

 逮捕された魔女・メリッサらは、人気女優から、家族間の遺産争いでかけられた「呪い」を解くよう依頼を受け、その報酬として、現金やポルシェ、ブカレスト市内のマンションなど45万ユーロ(約4,700万円)相当を受け取った。それに味をしめたのか、メリッサ達はそれ以降、女優に対する報酬の要求が次第にエスカレートしていったのだろう。そして、最終的にメリッサたちと関係を断とうとした女優に、「自殺させる」などと脅迫した容疑がかけられている。

 ほかにも、ルーマニアの有名サッカーチームのオーナー夫人から、夫の愛人の呪いに対抗する報酬として40万ユーロ(約4,200万円)相当を受け取っていた。さらに、人気サッカー選手が10万ユーロ(約1,050万円)を払い、国外有名チームへの移籍のための呪術を依頼していたことも判明。その効果かどうかは不明だがこの選手はその後フランスチームに移籍している。

 また、ブカレストのオプレスク市長は、選挙戦で呪術的な協力を依頼したといわれており、2009年の大統領選戦で敗れたジョアナ氏も、メリッサに助力を依頼していたという。

 ルーマニアの平均月収は日本円にして約3万7,000円。数千万円を報酬として受け取っていたメリッサ達の出来事は、まさに、巨額スキャンダルといえる。

「中島騒動もルーマニアの魔女スキャンダルも、本質は同じです。占いや魔術という目に見えないもので不安をあおり、欲望を刺激し、脅し、マインドコントロールする。それはすべて客から大金を引き出すためです」(占い業界関係者)

 では、逮捕されたメリッサはインチキ魔女だったのだろか?

「メリッサが本当に魔術を使ったか、その効果があったかなかったかは、実はあまり重要なことではないんです。問題は法外な報酬と、脅迫などの脅しです」(同)

 人の欲望と不安は際限なく、欲望と金は互いに互いを太らせていく。たとえ善意からだとしても、客の欲望や不安に合わせて「すべて叶えてやろう」と思った魔女は、無限に肥大する欲望と同等のもの=悪魔になってしまう。そして、行きつく先は破滅だ。

 お金で幸福は買えない。しかし、お金をかければかけるほど、不幸になってしまうこともある。前出の関係者は、「呪術が物理法則を超越することはありません。呪術は人の心に作用するんです」

 もちろん、法外な報酬を要求する魔女や占い師が悪いのは当然。しかし、不安を解消するために、また自分の欲望を叶えるためなら、いくらでもお金を出す客がいる、というのも事実。

 占い師にも魔女にもできることは限られている。制心を持つ良心的な魔女や占い師ならこう答えるだろう。「いくらお金を積んでもできないことはできない」と。



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