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 ハリウッド映画界で活躍するボールドウィン4兄弟の末っ子スティーヴン・ボールドウィン。A級スターとして高い知名度を誇る長男アレックとは対照的に、インディーズ映画に出演することが多く、B級スターとしてマニアックな人気を集めてきた。

 典型的なアイルランド系アメリカ人家庭に育ったスティーヴンは、11~12歳までカトリック教会に通っていた。しかし、親が強制しなくなってからは教会には行かなくなり、宗教心も薄れていったという。兄たちの後を追いかけてハリウッドへ行き、役者としてのキャリアをまい進するようになってからは、無宗教に近い状態であったそうだ。

 スティーヴンは1990年にブラジル人グラフィックデザイナーのケンニャと結婚し、アリゾナ州に住居をかまえた。ケンニャが第一子を妊娠した時、ブラジルのしきたりだからと国から家政婦を呼び寄せた。その家政婦が、常にイエス・キリストに関する歌を歌い続けることを不思議に思ったケンニャが、「なぜイエスの歌ばかり歌うの?」と聞いたところ、家政婦はゲタゲタと笑い出し、「私がこの家に来たのは、掃除するためだけじゃないのよ」「信じられないでしょうけれど、あなた方は、いつか新生し、福音主義キリスト教信者になり、牧師になるのです」と真面目な顔で言い放ったのだという。そして、ブラジルの教会で「あなたが働くことになる夫婦は、後にキリスト教再生派の牧師になるのです」と告げられたのだと明かしたのだ。

 妻からこの話を聞いたスティーヴンは、B級とはいえキャリアがノリに乗っていた頃であり「アホか」と思ったという。ケンニャも家政婦の言葉にとても驚いたそうだが、次第にキリスト教再生派に興味を持つようになった。家政婦に頼み、聖書のことをいろいろと教えてもらうようになり、移り住んだニューヨークにあるブラジル人教会で洗礼を受け、新生。ケンニャから福音主義キリスト教信者になったと伝えられたスティーヴンは、妻の表情がこれまで見たことがない程美しく穏やかであることに衝撃を受けたという。

 熱心に聖書を勉強する妻を見て、福音主義キリスト教に興味を持つようになったというスティーヴン。そんな彼が、新生するきっかけとなったのは、2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロ事件だった。前代未聞のテロ事件に混乱した彼は、「妻はキリストに夢中になっているし、もしかしてオレも信仰ってやつをする時なのかもしれない」と思い、すぐに行動を開始。聖書を読み、教会に通い、9.11の1カ月後には、全身を水に浸し福音主義キリスト教に新生したのだった。

 しかし、スティーヴンは、単なる福音主義キリスト教信者ではなく、それ以上のことを求められていると感じていた。スケートボードやサーフィン好きだった彼は、激しいスポーツを好む若者たちを対象にした布教活動を開始しようと決意し「Livin' It」という団体を立ち上げた。「自分の経験、心の平穏、幸せを得たことを伝えたい」と語る彼は、数々のイベントも企画し、迷える若者たちの心をわしづかみにしたのだった。

 スティーヴンは聖書の中にある、ヨハネによる福音書第3章30節の「彼(イエス)は必ず栄え、わたしは衰える」という教えに特に感銘を受け、首に「330」というタトゥーを入れている。「謙虚な心を持てということなんだよ」と嬉しそうに説明するスティーヴンだが、この教えを守ると、自分を積極的に売り込むスタイルのハリウッドでは生き残れないということも熟知しており、その上で、「もうアグレッシブになることなんてできない。すべては神の思し召しなんだから」とも発言。その言葉の通り、映画の仕事は激減。反面、低俗だとされるリアリティー番組への出演が増えていった。

 四六時中カメラが回るなか共同生活をする『Celebrity Big Brother』に出場した時には、ほかの出場者に対して、聖書の言葉を引用して説教をしたかと思ったら、「お前は負け犬だ!」と罵倒したりと、相変わらずのハイパーぶりを発揮し大きな話題に。

 福音主義キリスト教は、進化論を否定しており、恐竜は空想の生き物だと信じているのだが、スティーヴンがリアリティー番組で、「もし人間はサルから進化したっていうんだったら、何で、今なおサルはこの世にいるんだい? 進化して人間になったんだから、サルなんていなくなっているはずじゃないか」とドヤ顔で発言した時は、ここまでのめり込んでいるのかと世間をドン引きさせた。

 あまりにも極端過ぎる発言の数々に、ハリウッドから干されてしまったスティーヴンはお金に困るようになり、2009年7月、とうとう自己破産を申請。住宅ローンと税金の滞納、カードローンなどで約230万ドルもの負債を抱えて首がまわらなくなってしまった。世間は「神に見捨てられた」とスティーヴンを笑いものにしたが、彼は「神には何か考えがあるはず」とあまり動揺しなかった。翌年、その姿に感動した信者たちが、スティーヴンへの寄付金を募るホームページを開設。「自己破産したスティーヴンを救おう!」「スティーヴンが笑いものになっている=神も笑いものになっているのだ!」と、直接彼の口座に寄付金を振り込むよう呼びかけた。

 ハリウッドの福音主義キリスト教セレブ代表という地位を確立したスティーヴンは、その後、コメンテーターとして呼ばれることが多くなった。2010年3月に、オバマ大統領の署名式が行われた際、バイデン副大統領が「これは、ファッキング・ディール(すんげぇこと)だぜ」と耳打ちし全米を騒然とさせた時にもCNNに出演。「バラク・オバマはシカゴ出身の一大ギャングスターだ」とコメントし、独特な見解を示した彼を世間は面白がった。

 2010年12月には、BP原油流出事故絡みでケヴィン・コスナーに騙されたと告訴。この時は、せこいことをやっていると叩かれたのだが、彼はこれも神の望むことなのだと主張している。

 宗教にどっぷり浸かる生活を送っているスティーヴンだが、兄や姉たちは理解を示してくれているとのこと。スティーヴンの娘が一番の上の兄アレックに「おじちゃんは、パパよりも有名だから」と言った時、アレックは「そうかもしれないけど、おじちゃんがやってることより、パパがやってることのほうが、何倍も勇気がいることなんだよ」と伝えたと、嬉しそうに明かしたこともある。

 大統領選挙を控え、今後もコメントを求められることが多くなりそうなスティーヴン。彼の福音主義キリスト教信者としてのミッションは、まだまだ続きそうである。






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