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カラス天狗に魅せられ、神形を作り続けている
田村晴海さん

 神様と言われたり妖怪と言われたりと、伝説上の生き物として語られることが多い「天狗」。そんな伝説上の生き物である天狗に出合い、天狗をモチーフとして作品を作り続けている作家がいる。それが創作人形「不覇の会」主催・神形(しんぎょう)作家の田村晴海さんだ。神形作家とは、「神様の形」を作る作家のこと。人形作家は"人の形"を作るが、神様である天狗を作り続ける田村さんは、神形作家なのである。

 幼少の頃から数々の不思議な体験をし、霊力を持っているという田村さんは、なんと数年前に実際にカラス天狗に遭遇したとことがあるという。それがきっかけとなり、カラス天狗をモチーフにした神形の制作を始めたそう。近年は海外に作品を出展したりと精力的に活躍し、12月1日からは銀座の「Gallery G2」において「三人展」を開催。そんな田村さんに、創作の源となるカラス天狗にまつわるお話やスピリチュアルな体験をたっぷりとうかがった。

――神形作りのきっかけとなったカラス天狗に出合った時のエピソードを教えてください。

田村晴海氏(以下、田村) 今から約7年前、作品制作の資料を集めに、新潟まで取材に行った時のことです。友人が運転する車で山奥の道を走っていたのですが、車内の窓から外を眺めていると、遠くに山から山へと飛び跳ねながら移動する物体が見えたのです。不思議に思った私は友人に車を止めてもらい、カメラの望遠レンズでその物体をよく見てみると、それは羽の生えた人間のようなものでした。びっくりしてカメラから目を離すと、車のドアのすぐ外に、顔には鳥のようなくちばしを持ち、粗末な布を身にまとった「カラス天狗」が立っていたのです! 背丈は人間と同じぐらいで、全身が濃い藍色をしていました。

――怖くはなかったのですか?

田村 驚きはしましたが、不思議なことに、怖いという感覚はまったくなかったですね。友人が言うには、私は目の前に現れたカラス天狗と会話をしていたそうなのですが、私自身、一体何をしゃべったのか覚えていないんですよ。友人は私とカラス天狗の会話をずっと聞いていたようなので、会話の内容を教えてほしいと言ったのですが、「あなたの命にかかわることだから、何を話していたのかは絶対に教えることはできない」と言うんです。ですから、私はカラス天狗との会話の内容をいまだに知らないままなんです。

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田村さんが作り出す神形は不思議な雰囲気を
持っています

――なんだか不思議な体験ですね。

田村 そうなんです。そしてカラス天狗に会った後、不思議なことに、なぜか偶然にも藍染の生地を大量手に入れる機会があったんです。藍色はカラス天狗と同じ色。もうこれはカラス天狗からのご神託か、何かの運命としか思えなくて、藍色の生地を使って私はカラス天狗の制作に没頭していきました。以来、ずっとカラス天狗をモチーフに作品を作り続けています。

――そもそも「カラス天狗」とは、いったい何なのでしょうか?

田村 京都の蓮華王院三十三間堂に、千手観音のけん属である二十八部衆があるのですが、そこを拝観した時に驚くようなことがあったんです。なんと、二十八部衆の中の迦楼羅王(かるらおう)が、私が新潟の山奥で出会ったカラス天狗とそっくりだったんです。迦楼羅というのはインド神話に出てくる地の神様。また、鳥類の王とも言われています。つまり、カラス天狗とは、実は迦楼羅という神様のことだったのです。

 また、日本では平安時代まで、カラス天狗は宮中や村で人間とともに生活を営んでいたと言われています。『古事記』『雨月物語』『今昔物語』にも天狗(天宮として書かれていることが多い)の記述がありますから。また、その頃カラス天狗は、人々の病気を治したり、占いをしたり、呪術を使ったりと不思議な能力を持っていたので、人間からはまるで神のような存在として崇められ、とても重宝がられていたようです。

――現在はどちらかと言うと妖怪あつかいされている気がするのですが......。

田村 それには理由があります。平安時代、山岳修行をする修験者の中で、修行に耐えかねて落ちこぼれた者が、里へ降りてきては女性や子どもをさらったり、山伏の格好をして山の中を暴れまわったりと、いろいろと悪さをしていました。しかも彼らは、自分たちの悪行をすべてカラス天狗のせいにしてしまったんです。そのためカラス天狗の評判は落ちてしまい、人間たちからは悪者としてうわさされるようになったのです。それ以降、カラス天狗は神様ではなく、妖怪としてあつかわれるようになってしまいました。

――カラス天狗を妖怪にしたのは、人間だったんですね。

田村 そうなんです。そして人間との生活に疲れ果てたカラス天狗は人間界から遠ざかってしまったのですが、今でも日本各地の山奥でひっそりと暮らしていると言われています。実際に、私も新潟でカラス天狗に出合いましたしね。ほかにも愛宕山に登った時は、木の枝に膝を抱えて座っている烏天狗の姿も見ました。あの日私がカラス天狗に出合ったのは、空想上の生き物として語られることが多いカラス天狗と人間を橋渡しする役目を授けられたんだと思います。だから私はカラス天狗の存在を多くの人に知っていただくためにも、カラス天狗の神形を作り続けているのです。もっと言うと、見えない力によって、作らされているような感覚もあるのです。

――カラス天狗の神形はどういう方に人気があるのですか?

田村 毎年、カラス天狗で干支や熊手の神形を作るので、毎回楽しみにして購入されていく方もいらっしゃいます。そして、新作ができるたびに購入してくださる方もいらっしゃいます。一番人気は烏天狗のミニチュア神形ですね。国内や海外の美術館などに収蔵されている作品もあります。また、実際に購入した方の中には、「病気が治った」「宝くじが当たった」など、カラス天狗の御利益とも思えるうれしい声も寄せられています。私は、購入していただいた方の生年月日をお聞きして、その方の生まれた日の"月の形"をカラス天狗の額に縫い付けています。なぜなら千手観音の二十八部衆は、月齢の周期"二十八"と同じなんです。だから、私は"月"にこだわっているんです。また、自分の生まれた日の"月の形"を大切にすることが、幸運にもつながるんですよ。

 田村さんは、12月1日から銀座のギャラリーG2において「三人展」を開催。そして、来年の3月の個展に向けて、現在は人間と等身大サイズの巨大な烏天狗を製作中だという。また来年の11月には京都の寺院での展覧会も決まっているそうだ。まずは12月の展覧会で、田村さんの不思議な世界とカラス天狗の神形に触れてみてはいかがだろうか?
(じゅりんだ)

「三人展」
日時/2011年12月1日(木)~6日(火)
場所/東京・銀座「Gallery G2」

「田村晴海展」
日時/2012年3月5日(月)~11日(日)
場所/東京・八重洲「ギャラリー八重洲東京」



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