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今回お話を伺った山田奈緒子編集チーフ

 既報の通り、占い・おまじない雑誌「MISTY」(実業之日本社)が、今年10月15日発売の11月号で休刊し、占い雑誌のバイブルとして親しまれてきた31年の歴史に幕を下ろした。同誌を読んで占い師になろうと思った読者も多く、今回の休刊は占い好きの読者だけでなく占い業界全体にも大きな衝撃を与えた。

 "不況知らずの占い業界"と言われているにも関わらず、なぜ、「MISTY」は休刊せざるを得なかったのだろうか。「MISTY」の編集を行っていた説話社・編集チーフの山田奈緒子氏に休刊を受けた心境と、 占い業界のこれからについて話を聞いた。

――8月号で創刊200号を迎え、9月号からは付録(パワーストーン)を付けてリニューアルした直後の休刊ということで驚いたのですが、ことの経緯は?

山田奈緒子編集チーフ(以下、山田) 9月号で付録をつけてリニューアルするのは、前々から決まっていました。長年「MISTY」ではパワーストーン特集が人気で、「付録にするならパワーストーンだよね」と編集部で企画して進めていたんです。そんな時に発行元の実業之日本社さんから休刊が伝えられて......。本当に驚きましたが、実業之日本社さんの総合的な判断により、休刊ということになったようです。

――スピリチュアル系の雑誌は次々と創刊されていて、業界全体は元気な印象がありますが。

山田 新雑誌が出ると、競合相手が増えることになります。そうなると、雑誌の特集内容もそれぞれの雑誌の個性を出さないといけない。昨年の秋に創刊された「Chakra」(アイア)さんや「ららはぴ」(コスミック出版)さん等は付録に力を入れていたり、特集内容も「がんが治った」「いじめが消えた」など、割と強い言葉でアピールしているものが多い。だから本当にそのことで悩んでいる人たちにすれば、引き寄せられやすい作りだな、という印象がありましたね。スピリチュアル系の雑誌全体がそういう傾向に流れている中で、「MISTY」はスタンスがちょっと違っていたんです。例えば「占いをどう役立てれば幸せになれるんだろう?」「この占いを通じて自分が手に入れたい幸せってどういうものなんだろう?」といったことまで読者が考え始めるようになった。その結果、単純な占いやお手軽な開運法では十分な満足が得られなくなってきていました。そのためライトな占い好き層、「何でもいいから即幸せになりたい!」という層を獲得しづらくなってきていた、ということはあるかもしれません。良くも悪くも、読者、そして編集部が成長し過ぎてしまった、と言いますか......。

――「MISTY」の前身である「MY Birthday」増刊が発売された1980年は占いブームの最中で、「MY Birthday」も40万部発行というお化け雑誌でしたよね。

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インタビューをさせていただいた部屋には、「マイバ」をはじめ、
懐かしのおまじない雑誌がいっぱい!

山田 私はその頃、編集部に在籍はしていなかったのですが、当時を知る人に聞くとあの時代の占いブームはすごかったらしいです。編集部の隣に「魔女っ子ハウス」というおまじないグッズを売るお店があったのですが、毎日長い行列ができたり、修学旅行にきた女子学生が「MY Birthday」 編集部に遊びにきたりもしていたそうです。ほかにも、読者全員プレゼントの応募もものすごい数で、発送を編集部員が手作業で行っていたせいでかなり大変だったとか、今では考えられないほどの占いブームだったそうです。

――「癒やしブーム」や「スピリチュアルブーム」で読者に変化が?

山田 2000年以降、「癒やしブーム」や、江原啓之先生による「スピリチュアルブーム」が起こり、「MISTY」に占い以外の様々な要素が入ってくるようになりました。「自己啓発ブーム」もありましたね。いずれにせよ、もっと自分の内面と深く向き合うための特集が読者からの人気を得るようになってきました。特にここ最近は瞑想やチャネリング特集が好評でしたね。

――そういえば、近年の「MISTY」では占い特集が少ないように感じますね。

山田 占い特集のニーズがなくなったというわけではなく、たとえば12星座占い特集を組んだ時、1星座1ページ使えばその特集だけで12ページ必要になりますよね。でも、読者からすると読むべきページはその中のたった1ページしかないんです。残りの11ページは必要ない。経費の関係でページ数が減ってきていたこともあり、ちょっとページの使い方がもったいないというか......。それだったら、全員が楽しめる特集を組んだ方がいいんじゃないかという流れで、ここ数年は「12星座占い」のような特集は月に1本あるくらい、という状況でした。逆に増えていったのが「カード占い入門」や「ホロスコープ入門」といった、占いの仕組みそのものを解説した特集ですね。「これからは自分で自分を占う! タロット実占入門」なんて記事が人気を集めたりして、読者が"占われる側"から"自分で占う側"へと移行し始めていた傾向はあります。実際に「MISTYを読んで占い師になりました」という方にもたくさんお会いしますし。まあ、あとは、ネット占いの登場により、自然と減っていったというのもあります。

――ネットの影響は大きかったですか?

山田 占いのロジックは意外に複雑なので、雑誌でやろうとするといちいち自分で計算しないといけない。ネットは生年月日を入力さえすれば勝手に占ってくれます。だから「今すぐにこの悩みを解決したい」という人が雑誌からネットに流れた可能性はあります。その一方で、ネットがあるからこそ登場してきた占い師さんもいらっしゃいます。なかでも、石井ゆかりさんの登場はとても大きかったですね。石井さんはあくまでも占い師ではなく「ライター」のスタンスですが、 独学で星占いを勉強されて、ご自身のサイト(「筋ト」)で発信してファンを獲得したというのはエポックメイキングな出来事でした。

――ネットの普及で、占い師の活躍の場が増えたわけですね。

山田 ただ、その分占い師の敷居が下がっている感はあります。占い師って資格がないので、誰でも「今日から占い師」になれちゃうんですよ。だからこれからは単に占いだけでは人は呼べないと思います。重要なのは「誰が発信している占いなのか」。その人のキャラクター、スキル、誠実さや「この人の言うことは信用できる」と思わせる力がないと。近頃は文体に個性を出していたり、コスプレ風の衣装で鑑定したりと、自己プロデュースに力を入れている人も多くなりましたね。そうした占い師さんがご自身でイベントを実施して、じわじわと固定ファンがつき始めているのを見ると、やはりこれからは個人の力がものをいうのかな、と。どんな占いも最終的には「占う側・占われる側」のサシの勝負ですから。

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「占いは当たるか当たらないではな
く、そこも含めて楽しめる心のゆと
りが欲しいですね」

――今後はどのような占いが人気を集めると思いますか?

山田 そういう意味でも個人的には、対面鑑定が再び人気になるのではないかと思っています。最近は単に「占い結果を述べて終わり」じゃなく、じっくりと話を聞くカウンセリング的な時間を設けていたり、その人に合わせたパワーストーンブレスを作ってくれたり、と多種多様なサービスを付加している方が増えています。それはもはや単純な「占い」ではないですよね。その人(相談者)のために用意された特別な空間や時間、という感じがあって「これならお金を払ってもいい」「また行きたい」と思える。今、巷ではワンコインで手軽に占えるようなものも人気ですが、それと相反するように、そうした"オーダーメイド"な占いがもっと流行るのではないかと思っています。「"誰かに"占って欲しい」ではなく「"この人に"占って欲しい」と思わせることが固定ファンの獲得にもつながりますし、そういう人をどれだけ増やせるか、ということに占い師の生き残りがかかっているような気がしますね。その占い師の誠実さを一番感じられるのは、やはり直接会って占う対面鑑定だと思うんです。

――最後に、山田さんをはじめ「MISTY」 編集部の皆さんが今後占い・スピリチュアル業界とどう関わっていくおつもりなのか、お聞かせ頂ければと思います。

山田 占いは面白くてとても興味深い世界です。昔から言われているのですが「エロ」と「占い」は絶対に廃れない業界なんですよ(笑)。人間の根本に直結する分野だからでしょうね。「明日、どうなるだろう」と人間が未来に不安を抱く限り、占いは必要とされると思います。特にこんな先の見えない世の中ですから、また新しいニーズが生まれてくるはず。そんな時に私たちも「新しい形の占い」を提案できたらと思っています。それがどういう形になるのかは、まだまだこれからの話なんですけどね。
(文/ふじいりょう)



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