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Photo by Zee81 from Flickr

 2000年3月、東アフリカの内陸部にあるウガンダ共和国で、1,000人を超える「神の十戒の復活を求める運動」信者が死亡した。その半数以上は教会の中で炎につつまれ焼死。身元も分からぬほど炭化した、無数の遺体から煙がくすぶりあがる映像は世界中を駆け巡り、大きな衝撃を与えた。

 警察は当初、カルト教団の集団自殺との見解を示した。なぜなら、「神の十戒の復活を求める運動」は、"99年12月末日を「この世の終わり」だ"と説く教団だったからである。しかし、捜査の結果、信者全員が殺害されたことが判明。教祖と数人の使徒たちによる、世にも恐ろしいカルト集団殺人事件だったことが明らかになった。

 世界中を震撼させた事件を起こした「神の十戒の復活を求める運動」の教祖たち。彼らは一体どのようにして教団を立ち上げ、そして破滅していったのだろうか。

■カトリック信者がカルトの教祖に

 「神の十戒の復活を求める運動」は、89年、ジョゼフ・キブウェテレによって立ち上げられた。32年にウガンダに生まれたと伝えられているジョゼフは、ウガンダ国内の政治と宗教が激変する時代を生きてきた。国民の60~75%がキリスト教徒だとされるウガンダでは、当時、「奇跡」や「聖母の出現」に焦点を当て活動を行っていた宗教グループが多かったという。そのため、ジョゼフは、「奇跡」を謳うカルト的な教えに強い影響を受けたと見られている。

 長年に渡り敬虔なカトリック信者であり、ローマンカトリック教会の神父をしていたこともあったジョゼフだが、84年、突然、自宅にある電話やテレビなど電化製品を通して、聖母マリアと直接交信できるようになった、と言うようになった。この発言が問題視され、ローマンカトリック教会を破門、追放されたのだが、それでも彼は主張を変えなかった。

 89年、ジョゼフの元に、クレドニア・ムウェリンデという女性が訪れた。クレドニアは「聖母マリアから、あなたを我々の家族として受け入れるよう、指示された」とジョゼフに伝え、かくして2人は「神の十戒の復活を求める運動」を立ち上げたのである。

■会話は一切禁止、コミュニケーションは手話のみ

 ウガンダの南西部、カンヌグの郊外に「神の十戒の復活を求める運動」の教会本部を設立すると、そこで彼らは、「99年12月31日にこの世が滅びる。信じるものだけが天国に行くことができる」という聖母マリアの啓示を受けたと伝え、信者を募った。信者は貧しい層を中心にたちまち集まり、あっという間に1,000人を超えた。ちなみに、この世の終わりだというメッセージを受けたのは、クレドニアだという説が強く、彼女は11年度イグ・ノーベル賞「世界の終わりを不正確に予言した人々」という数学賞が贈られている。

 「神の十戒の復活を求める運動」に入信した者は、土地や家、全ての所有物を売却し、その金を教会に寄付することが義務付けられた。そして、男、女、子どもに別れて生活するよう命じられ、家族であっても互いにコンタクトを取ることを固く禁じられた。食事は1日に2回、石鹸の使用は禁じられ、性交渉も固く禁じられた。信者は全員緑色のユニフォームを、6人の男性使徒と6人の女性使徒は黒のユニフォームを着用したという。

 「神の十戒の復活を求める運動」独特のユニークな規則もあった。それは、会話することを一切禁じる、というもの。「人間は嘘をつく」という理由から、彼らは手話で意思疎通を行い、信者以外の人に対してもそうするよう強要された。

 信者の数が増え、規律が整うと、彼らは教会の周りに学校、店、農場を作り、村をフェンスで囲んだ。地元警察は「信者たちはみな真面目で、よく働き、危害はない」「周囲の村に対して、お手本的に良いコミュニティー」だとして、教団の村を歓迎。周囲の貧しい人々も次々と入信するようになり、一説によると4,000人近くの信者がジョゼフを敬っていたという。

■教祖自らが手を下した"この世の終わり"

 しかし、99年の大晦日が何事もなく過ぎ去り、2000年が始まると、信者の中に疑いを持つ者が現れるようになった。ジョゼフとクレドニアは、「マリアからXデーを延ばすという啓示を受けている」と主張し、その日は「3月17日」だと信者たちに伝えた。しかし、2月に入ると、2人は牛などを売却し始め、3月になると、大量のコカコーラを購入。このコーラに毒を混ぜ、信者に飲ませ殺害したと見られている。

 3月17日、朝の10~11時ごろ、信者たちはジョゼフらに「もうすぐ、この世の終わりがやって来る。一緒に天国へ行くために教会に集まれ」と命じられ、新しく建設されたばかりの教会に集められた。そして、入り戸を厳重に閉めると、爆発音と共に火の手があがった。こうして教会内に閉じ込められた信者は全員焼死したのだ。遺体は炭化したものや完全に灰になってしまったものばかりで、正確な死者数は分かっていないが、500人近く亡くなったとされている。

 さらに20日、教会の3メートル先の屋外トイレの穴の中から、死後、かなりの時間が経ったいくつかの遺体が発見された。警察は、教会での集団殺害を察知した信者たちが、口封じのために殺されたのではないかとの見解を示した。その後も、コミュニティーの礼拝施設の床に掘られた穴から150人を超える遺体が発見され、それらは毒殺されていたという。

 礼拝施設のその外には教会とは無関係の家族が住んでいたが、「こんな大量の人が殺害され埋められていただなんて、知らなかった」と証言。「彼らは何もしゃべらなかったから。いつも、何が起こっているのか分からなかったんだ」と頭を抱えた。このコミュニティーだけでなく、国中にいた「神の十戒の復活を求める運動」信者たちのほぼ全員が、同様の手口で殺害。被害者数は1,000人を優に超えると言われている。

 事件当初は、集団自殺だと見られていたため、ジョゼフとクレドニアも亡くなったとされていたが、その後の捜査の結果、大量殺人であることが判明。2人は、逃亡し、今もどこかに隠れ住んでいると伝えられている。

 現代史上、最悪のカルト集団殺人事件を起こした「神の十戒の復活を求める運動」。海外メディアは、予算がないからと遺体をその場にむき出しのまま放置したり、強烈な悪臭を放つ遺体の掘り起し作業を囚人たちに行わせる地元警察やウガンダ政府のことを強く批難し、「神の十戒の復活を求める運動」も最悪だが、ウガンダという国のシステムも最悪だと批判した。

 独裁者イディ・アミン大統領が追放され、政情や治安は安定したと伝えられているウガンダだが、政府もキリスト教会も、国民に必要なものを与えてくれないとして、カルトや新興宗教に入る者は後を絶たない。今なお多くのカルトがそれぞれのコミュニティーを作り活動しており、第二の悲劇が起きるのは時間の問題だと懸念する声も一部で上がっている。






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