――占い好きを悩ませるのがお金の問題。高けりゃいいってもんじゃない、でも安いと妙に不安になる......。そうやって、占いジプシーになってしまった人も多いはず。筋金入りの占いジプシーの話を反面教師に、上手な付き合い方を学びましょう。

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守護霊様! 私に愛の手を差し伸べてください

 モグとの「1秒にも満たない」逢瀬の後、私は恋の成就へ向けた新たな戦法を考えあぐねていました。そして目にした「チャネリング」という単語。「チャネリング」とは、相談者の守護霊などからその人の過去や未来、運命などを見てアドバイするしてくれるもの。でもそんな正体不明のものとなると、さんざ占い師を巡ってきた私とはいえちょっと尻込みしてしまいます。

 ある日、バイト先の同僚で流行に敏感なKちゃんにその話をすると、「『東銀座の神』と呼ばれてるすごいチャネラーさんを知ってますよ」と一言。その人のアドバイスで恋成就する人が多く、「恋愛の神様」という意味からそう呼ばれているらしい。Kちゃんが紹介してくれるというし、なにより「東銀座の神」という存在に惹かれてとうとう私はチャネリングに挑戦することにしました。

 とはいえ「チャネリング」の予約が取れたのは、なんと4カ月も先! その間は今まで通り占いに行ってはライブへ行く、を繰り返し、「神様への謁見」を待ちました。「神様に謁見の予約がある」というのが安心感になってよかったのか、タロットの結果も上々で、「彼と仲良くなれるわよ」と言う占い師さんが続出。そしてある日、本当にモグの方から話しかけてくれたのです!

 モグにライブの感想を聞かれたので、ここぞとばかりに気持ちを込めて答えました。すると熱意が通じたのか、占いの効果が一気に花開いたのか、それ以来、ライブの後、子犬のように私に駆け寄って来ては感想を聞いてくるモグ。遠くから見つめるだけだったその彼が自分のところへ来る幸せで、私はまさに有頂天でした。

 月日は経ち、ついに「東銀座の神」と会う当日。指定された東銀座のマンションの一室に通されると、引き戸の奥から「どうぞ」という朗らかな女の人の声が聞こえました。おそるおそる引き戸を開けてみると、何も無いがらんとした部屋に30歳位の普通の女性が座っていました。神様と言うくらいだからもっと迫力ある人を想像していたのでちょっと面食らった私。それを見て私が緊張したと思った彼女は、「リラックスしてくださいねー」と言って椅子に私を座らせると、部屋の電気を消しました。そして、突然の暗闇でビビっている私の顔の前に

「シュボッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 と炎が立ち上ったのです。「なにごと!?」と思って神様を見ると、神様はライターを手に握り炎を立てて、その明るさで私の肩越し、私の頭の上などをじっーと見てはなにやら紙にメモしていました。ひと通り終わると部屋の電気をつけ、「はい。これが、あなたのオーラの状態とあなたを守っている人です!」と、先ほどのメモを私に見せました。紙にはオーラとたくさんの人型が描いてあり、どうやら暗闇に明かりをともして、彼女は私の後ろにいる霊らしきものを見ていたのです。

 「何か聞きたい事はありますか?」と言われたので、「今好きな人がいるのですが」とモグの写真を見せると、彼女は再び私の肩越しを凝視して言いました。

「あなたに思いを寄せてる人ねえ......この人じゃないな。この人とはまだ距離があるよ」

 なんで? どうしで!? モグとは今いい感じなのに! すると神様は人の顔を描き出し、「こういう男性が今あなたを気に入ってるよ」。そう見せてくれた似顔絵ですが......、神様、霊は描けても、残念なことに似顔絵が猛烈にヘタだった......。今私を気に入ってくれてる人がモグではないのは分かったけど、モグ以外の誰なのかがまったく判別不能でした。

 そして、モグじゃないと言われて落ち込む私に神様が、「好きな人と成就する方法もあるけど......、聞く?」と一言。お願いします! と即答すると、彼女曰く、この方法は相性の悪さも運勢も越えるほどの効果で、相当難しい片思いから結婚にいたった女性もいるらしい。彼女はモグの生年月日を何やら計算しいくつかの月と時間をメモしてくれました。

「この時間に合わせて彼に連絡とってみて。電話でもメールでもいいから。この方法は効くよ。ただし......」言葉を止めた神様の顔を見ると、「この方法、止めちゃうと効かなくなるから気をつけてね。結婚した彼女、安心して途中で止めちゃって、結局離婚したから」そう言ってフッと笑いました。

 神様の意味深な笑いにビビりつつも、秘法ならきっと効くはず! と勇気を出して、その日からモグにライブ前の激励メールとライブお疲れさまメールを、神様に教えてもらった時間に送り続けました。その効果が奏したのか、モグはライブ終了後決まって私に感想を聞きにやって来続け、さらには打ち上げの席でモグの隣に私が座るのも普通になり、「彼女ポジション」に片足をつっこみ始めたのです!

 私の横ではしゃぐモグを見つめながら「神様の秘法が最後の一押しで、このまま恋人になっちゃうんだなあ」と広がる妄想。私はあの両思い寸前のなんともいえないワフワした心地で飲み会に参加していました。

 そんなある日の飲み会で、モグとメンバーがよくある「下積みバンドマン貧乏討論」で盛り上がっているのをニコニコしながら聞いていると、「モグも彼女つくってさー、飯作ってもらえばいいじゃんよー」と、メンバーの一人がそう言ってモグの背中を叩いた瞬間、モグの手にしたビールがテーブルにこぼれました。「もしかして、隣にいる私を彼女として意識して動揺してる?」と内心にやけつつ、彼女アピールで甲斐甲斐しくおしぼりを手渡す私の横で、モグは面倒そうにビールを拭きながら、

「てか、彼女ならいるってば」

 と一言言ったのです。.........家族同然のメンバーもスタッフも誰も知らなかったのですが、なんとモグには彼女がいたのです。衝撃の一言に氷つく一同。それに気付かずビールを拭き続けてるモグ。明け方のライブハウスでの出来事でした。

 神様の秘法。それは確かに効いたと思う。距離が縮まったのは事実。しかしモグに恋人がいたとは! 秘法をもってしても難攻不落な恐るべしミステリアスボーイ。山のようなおしぼりを手に、モグと自分との間にガラガラとシャッターが降りる音を私は聞いたのでした。
 
 モグと出会ってから10カ月。全力で突っ走って来た疲労感と唐突に恋を失った心の傷で気付けば本格的にボロボロの私。そんな自分を復活するために、スピから離れるばかりか、私はさらに深くスピの道に踏み込んでいくのでした......。
 
カワグチニラコ
イラストレーター。32歳独身。初めての占いで占い師を信じなかったばっかりに占いジプシーに。"当たる"と聞けばどこへでも行き、タロットなどの定番から変わり種までひと通りの占いは経験済み。現在、ジプシー時代に得た知識と本来の好奇心が相まって、占い師に転向しようか悩み中。




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コメント(1)

結果は唐突なジエンドだったんですね…その後、ライヴに通われたのか気になりますが…(^_^;)でも占いは統計学みたいな感じですからね〜。過去問みたいな感じだから程々に…。でも語り口面白いのでジプシー姫のエッセイ、次回楽しみにしてますm(__)m

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