――占い好きを悩ませるのがお金の問題。高けりゃいいってもんじゃない、でも安いと妙に不安になる......。そうやって、占いジプシーになってしまった人も多いはず。筋金入りの占いジプシーの話を反面教師に、上手な付き合い方を学びましょう。

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たしかに、外れてはいないんだけどさあ......


 前回お話したように、私が10年にも渡る占いジプシー生活をはじめたきっかけは、恋に落ちたからでした。あれはそう、小雨降る中央線駅前、地元の小さなライブハウスでした。

「群馬出身の伝説バンドは、BOØWY! BUCK-TICK! そして俺たちNENETSだぜ! ドリームズカムトゥルー!!」

 と、伝説になってもないのに訳の分からないことをステージ上で叫んでいた男・茂木君。そのパンクバンドのボーカルで通称「モグ」でした。100均の黄色い合羽を着て真剣に飛んだり跳ねたりシャウトする姿がおかしくもかわいくて、なぜか輝いて見えてしまい、彼にクギ付け。さらに、ライブ後にスタッフから演奏のまずさを指摘され、悔しくて泣き暴れるモグを見て、「こんな純粋なやつ、今まで見たことない!!!」とハートをぐわしとつかまれちゃったんです。モグ19歳、私22歳、出会いの瞬間でした。  

 「絶対彼をゲットしたい!!」と、その日から私はモグのバンドを猛追跡。まったく売れてないとはいえ、バンドマンとお客さん。そう簡単には近付けません.....募る恋心にもどかしい距離。この恋を成就させたいと生まれて初めて占いに行けば、占い師に「彼とは絶対恋人になりません!!!!」と宣言される始末。

 占い結果に心底ダメージを受けた私は、占いで受けたダメージは占いでしか回復しない!! と、ひまを見ては「モグと私の相性」「モグと私の今後」を聞きに行くようになりました。しかし、占い結果に一喜一憂するだけで、モグと私の距離は一向に縮まりません。ライブを見に行ったって、帰り際にお礼のあいさつを交わす程度。あきらめられないし幸せもない、鬱々とした日々でした

 そんな時に飛び込んだ占い師さん。彼女は風水だかカラーアドバイスなるものをしていて、「今度ライブに行く日、紫のスカーフをしてくといいよ」と言いました。「え? どういうこと?」と疑問に思い詳しく話を聞くと、ただ漫然と運命や運勢があるわけではなくて、その日その時間に相手が惹かれやすい、目にとまりやすい、グッズや色やファッションがあるらしいのです。ああ、今まで私は占いの何を活用していたんだろう!!

 何かに開眼した私は、その日をきっかけに「ライブ前には占いでラッキーファッションを聞いて実行する」ことを始めたのです。もちろんライブの日は指示通り、昨今まったく流行っていない紫のスカーフを巻いて行きました。するとライブ終了後、なんとメンバーに、「打ち上げ出て行きませんか?」と声をかけられたのです! その瞬間「占いってすごいじゃん!!」と「占いアドバイスを実行=果てに両思い」という思い込みにギアが入ったのです。

 そして私はレベルを一段上げて占いにハマりました。まず「この人の言う通りにしたら恋が叶った!」という評判の占い師を巡り、月4回あるモグのライブのためにさまざまな恋のラッキーアイテムを聞き出すのが習慣に。風水はもちろん、カバラ数秘術、タロットカード、なんでもござれで「◯月×日△△で、モグとの恋に効果のあるファッション」を聞き、赤のスカートと言われればそれを買って履き、白のカーディガンと言われれば白いカーデをはおり、ドットがいいだの、ファーがいいだの、とにかくいろんなアドバイスをまとめて一気に身に着けました。

 アドバイスを頭から爪の色まで実行した私の格好がどんなだったか、今や定かではありませんが......。  

 しかし、それから数カ月、一向に距離が縮まらない!!! この時の私は、なまじ最初の紫のスカーフが効いたと思っているので、ラッキーファッションの効果を疑うというより「もっと頑張って実行しなきゃ!!」という思いが強く、さらに自分に鞭をいれ、今度は「ラッキーアクション」なるものも取り入れ始めました。タロットや数秘術で見てもらうに、その日のモグの精神状態や気分に合わせて、彼がキュンとくるような行動がある......らしいのです。

「この日は彼は気が立ってるから、打ち上げは早めに切り上げるべし」
「この日は彼は落ち込んでるから、元気な声の子に惹かれやすい」

 と、その時々に合わせてはしゃいだり、楚々としたり、クールぶったり、まさに多重人格とも言えるがごとき振る舞いを実行。もはや相手から見たら、まったく性格の分からない子として映っていたんじゃないだろうか......。ま、それでも占いを信じてやり続けましたケド。  

 半年過ぎてもモグと私の関係は進展することもなく、知らないうちにイライラがマックスに! このイライラをどうにかして欲しくて占い師にすがっても、お金だけがバンバン飛んでいくだけ。そんな時、ある占い師さんが、「近々彼と二人で会えますよ」と一言。手当たり次第占いに行っては結果が出ない日々を送っていた私は、はっきり言って「んなわけねー」と信じてませんでした。

 そんなことがあった数日後、モグ不在のライブ打ち上げでメンバーが、「モグ、知り合いのライブのチケット余ってて、行く人探してたなー」とつぶやいたのを私は聞き逃しませんでした。「私行きたい! モグ君に連絡するから連絡先教えて」と、今まで欲しくて欲しくてたまらなかったモグのアドレスをゲットしたんです!! やはり神はいた! 占いよ、ありがとう!! さっそくモグにメールすると、「明日時間ありますか?」と、即レス!! やっと二人で会える! やっとモグと私の恋がスタートするのね!! と、今までの努力とさまざまな占い師の顔を浮かべて勝利に涙しました。  

 次の日、(もちろん占いに行ってから)待ち合わせの場所に向かうと、夕方の駅の雑踏の中でヒョロっとした猫背のモグが立っていました。私はこの後の展開(ごはんか飲みに誘うか)をイメトレしつつ、「モグ君!!」とその日のラッキーアクションである、元気系爽やかスマイルで彼に駆け寄ったのです。 その瞬間、モグは、「あ、お疲れっす!......これ、チケットっす」。そう言って私にチケットを2枚渡すと、くるりと背中を向け、それは鮮やかに改札の向こうに消えて行きました......。  

 うっ......占い師さん......当たったよ!! 彼と二人きりで会えたよ......! でも"1秒に満たない逢瀬"ってどういうことーーー!!!!  

 用意した誘い文句を飲み込みながら、あまりに期待外れの展開で呆然自失の帰り道。悲しいんだかムナシイんだかも分からない。ただ、負けて帰れぬ戦士のごとくダラダラと歩きながら、私はなぜか本屋に立ち寄っていました。足は自動的に占い本のコーナーへ......。占い雑誌を手にし、そこで何気なく目に入った文字が、

「チャネリング」

 興味をそそられ読み込んでみると、なんとタロットカードや水晶などの道具をまったく使わないのに、相談者のすべてが分かってしまう、「チャネラー」というなんだかすごい人たちがいるらしいのです。「ナイーブで恥ずかしがりやな彼だし、二人きりですぐ打ち解けられなくて当然! チャネラーなら、いい助言がもらえるかもしれない! モグと私の未来のために、もっといいアドバイスもらえるかも!」。

 発見した新しい情報に、一気に目の前の霧が晴れるかのようでした。こうして私は、1秒の逢瀬に懲りないどころか、気分新たにスピの世界によりディープにハマっていくのでございました......。

カワグチニラコ
イラストレーター。32歳独身。初めての占いで占い師を信じなかったばっかりに占いジプシーに。"当たる"と聞けばどこへでも行き、タロットなどの定番から変わり種までひと通りの占いは経験済み。現在、ジプシー時代に得た知識と本来の好奇心が相まって、占い師に転向しようか悩み中。



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