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できる男は違うね!

――実力だけでは生き残れないハリウッドという世界に生きるセレブ。彼らを支えているパワーの源、幸運をもたらす見えざる手を分析します。

■今回のターゲット
トム・クルーズ(サイエントロジー)

 ニューヨーク州の真ん中に位置する商工業都市シラキュース市で生まれたトムは、16歳のときに先生の勧めで演劇部に参加したことがきっかけで俳優になると決心し、学校を中退。ニューヨーク市に移り住み、1981年に公開されたブルック・シールズ主演の映画『Endless Love』でキャリアをスタート。83年に白のワイシャツにブリーフ姿で踊りまくった『卒業白書』で注目されるようになり、その3年後に公開された『トップガン』で苦悩するセクシー・エリート戦闘機パイロットを演じ、世界中の女性から愛されるようになりました。激しいアクションが魅力の『ミッション:インポッシブル』シリーズは多くの男性から支持されており、今やハリウッドには欠かせない存在となっています。

 甘くセクシーな笑顔がチャームポイントのトムですが、子どもの頃、そのほほ笑みからは想像できないようなつらい思いをしてきました。父は暴力的な人で、トムは殴られたり蹴られたりの暴行を受けてきたのです。「父は信用できない。側にいるときは気をつけなければいけない」と、緊張しながら幼少期を過ごしたのだとインタビューで回想しています。

 父親は電気技師だったため、仕事の都合で引越しが続き、11歳で両親が離婚。母に引き取られた後はケンタッキー州に移住、母親の再婚と同時にニュージャージーに移り住むなど、転々とする落ち着かない生活を送ってきました。トムにとって、家だけでなく学校も居心地の悪い場所でした。母と3人の姉妹同様、失読症に苦しみ、学業が思うようにいかなかったのです。幸いレスリングに出会い、才能を発揮するようになったのですが、ひざをケガし挫折してしまいます。失意のトムは、14歳でフランシスコ会の神学校の門をくぐり、司祭になるため勉強を始めるのですが1年でギブアップ。目標を失ったトムに先生が演劇を勧めたのはこの頃だったのです。

 学校を中退しニューヨークに移住したとき、トムは今後10年間の計画を立てたそうで、次々と実現していきました。しかし、胸にはポッカリと穴が空いていたようで、87年に結婚した最初の妻で女優のミミ・ロジャースから、新宗教サイエントロジーを紹介されると、たちまち強い興味を示したそうです。トムとミミは90年に離婚していますが、ミミはその理由を「トムは真剣に修道士になりたいと考えていたの。そのためにはもうセックスはできないって言われて。私はそんな生活は我慢できないって伝えて、それで離婚することになったの」と告白。トムは、サイエントロジーに出会い、すぐにのめりこんだわけではなく、90年まではまだ気持ちに迷いがあったようです。

 トムが本格的にサイエントロジーにはまっていったのは、『デイズ・オブ・サンダー』で共演したニコール・キッドマンと90年12月に再婚してからと伝えられています。米「ロサンゼルス・タイムズ」によると、2人はサイエントロジーの本部がある、人里離れたギルマン・ホット・スプリングという場所で集中的に講習を受け、どんどんのめり込んでいったそうです。

 サイエントロジーは、SF作家L・ロン・ハバードが50年に出版した『ダイアネティックス-明確な思考を取り戻せ』を基にした神性を持たぬ宗教で、信者たちは「オーディティング」と呼ばれる講習を受け精神力を高めていきます。幼い頃から苦労の連続であったトムにとって、頑張れば結果がついてくるサイエントロジーの教えはぴったりくるものだったのでしょう。トムは後にインタビューで「自分が小さい頃から疑問に思っていたこと、そのすべての答えをサイエントロジーを通して学んだ」と語っており、共感することが多いとも明かしています。

 忙しい映画撮影の合間に1,000万円を超えるとも言われる「オーディティング」を受け、レベルを上げていったトム。2004年の「インターナショナル・サイエントロジー・ニュース」紙によると、トムは「OT VI」の講習を終了し、二番目に高いレベルとされる「OT VII」に入ったそうです。しかし、長年トムはサイエントロジーについて語ることはなく、プライベートはベールに包まれていました。トムが今日のようなサイエントロジーの顔となったのは、04年3月に14年間トムの広報を務めてきたパット・キングスレイを解雇し、実妹でサイエントロジー信者であるリー・アン・ディヴェッテを新任広報に迎えてからです。

 妹の勧めもあってか、トムはサイエントロジーの広告塔を買って出るようになり、「サイエントロジーのおかげで失読症が治った」と国際難読症団体に挑戦状を叩きつけたり、ブルック・シールズが産後うつをカウンセリングと薬で治したという告白をした際には「とんでもない!」と非難。ABC局のニュース番組に出演し、「自分はもともと精神医学には大反対していた。サイエントロジーに出会い、なぜ精神医学がまやかしなのか、はっきり理解できた」とサイエントロジーを大絶賛する発言をし、カルトにはまった可哀想な信者だという声も上がるようになってしまいました。06年には、パラマウント映画が、これらの問題発言を受けて契約を打ち切ると発表しました。

 しかし、トムはサイエントロジーにより人生が豊かなものになったと深く信じ、その素晴らしさを世界中に説くことを止めませんでした。サイエントロジーのナンバーツーにまで登りつめたというプライドもあるのでしょう。サイエントロジーのことを語るトムは、どの映画でも見たことがない表情で熱く語っています。

 06年11月にスピード婚した3番目の妻ケイティ・ホームズをサイエントロジーに改宗させ、サイエントロジー挙式をあげました。初の実子となるスリの出産もサイエントロジーの教えにのっとり、薬なしの「サイレント・バース・スタイル」で行ったと伝えられています。ABCの夜のニュース番組で、スリに洗礼を受けさせるかという質問を受けたときにも「カトリックでありサイエントロジストであることは、あり得ないんだよ」と笑顔で否定。スリの養育はサイエントロジーの教え通り、子どもではなく一人の人間として接し、しかることなく育てているのだそうです。

 昨年、元信者が執筆したサイエントロジーに関する暴露本の中で、「トムとニコールが離婚したのは、サイエントロジーかニコールかと選択を迫られたから」「トムには薬物をやっていた過去があり、それが彼のネックになっている」「トムの金はサイエントロジーが握っている」「トムの家で働いているスタッフはすべてサイエントロジスト」と書かれ、トムは強い抗議文を出しました。このことがあってから、サイエントロジーについて語ることが少なくなってきましたが、信仰に対する情熱はまだまだ熱いもののようです。

 マニアックなカルト信者だとバッシングされても、役者の仕事はきっちりとこなし、それなりの興行成績を残しているトム・クルーズ。今後も、宗教とキャリアを上手く両立させ、人生を歩んでいくことでしょう。






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